球体とリズムBACK NUMBER
マリノス、宮本ガンバの策に屈す。
「愚かな失点」と消された爽快さ。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2020/02/25 11:50
ACLでの連勝を見れば“初見”を相手にした際の攻撃力は確か。では連覇を狙うJ1の舞台では? マリノスの真価が問われる1年となる。
宮本監督が講じた2つの狙いとは。
さらに34分、バックパスを受けたGK東口順昭がダイレクトで左前方へロングフィードを送ると、抜け出した倉田からのグラウンダーのクロスを矢島が仕留めて、ガンバがリードを広げた。
10番と21番のコンビで奪った2つの得点には、宮本監督の狙い──「奪いきる守備」と敵のSBが空けた隙を突くこと──が見て取れた。
「今日は特殊な形で、いつものフォーメーションではなかったんです」と倉田は試合後に打ち明けた。「マリノス対策というか、相手に合わせたシステム。守備時は5-4-1(右のMF小野瀬康介が最終ラインに落ちる形)、攻撃時は4-1-4-1みたいな。特に気をつけていたのは、相手の攻撃時にSBが中に入ってくるところ。そこを消そうと」
たしかにこの日は、横浜FMの左SBティーラトンと右SB松原健が中央に入ってポゼッションを高めるシーンが少なかった。それはガンバが昨季リーグ覇者から勝利を奪うために講じた策の効果でもある。
後半に入って主導権を奪い返すも。
15年ぶりにライバルたちの挑戦を受ける立場となった横浜FMは今季、相手からつぶさに研究され、強みを消され、弱みを突かれることが増えるはずだ。すでにスーパーカップで神戸が、開幕戦でガンバが、そのようにして王者から白星を奪った。
それでもマリノスを率いる54歳のオーストラリア人指揮官は、「勝ち負けによって、何かを変えようとは思わない。これまでと同じフットボールを続けたい」と言う。
神戸戦と同様に、マイナーチェンジを施した後半には主導権を奪い返し、マルコス・ジュニオールの得点で1点は返した。しかしこの日はそこで打ち止めとなり、ホームでの開幕戦に敗れてしまった。
スーパーカップでの試運転の後、 AFCチャンピオンズリーグのグループステージでは敵地で全北現代を2-1で下し、ホームでのシドニーFC戦は4-0の大勝を収めたが、やはりJ1はアジアのこの段階よりも厳しい戦いなのだろう。