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アイスホッケーよりアイスクロス!?
究極の氷上バトルに魅せられた男。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJoerg Mitter / Red Bull Content Pool
posted2020/02/24 19:00
アイスクロスに専念することを決めた山内斗真。好奇心旺盛な青年のチャレンジに注目していきたい。
同じ氷上だから、浮気じゃない。
「とにかく、新しいことに、チャレンジできるものは何でもトライしたかった。それに、同じ氷上スポーツということで浮気はしていないかなと(笑)。団体スポーツと個人スポーツの違いを知れるのも面白いなと感じていました。そこでまずはチームの監督、そして当時の4年生に自分の気持ちを伝え、理解していただいて、アイスホッケーと並行して行っていくことになったんです」
しかし、アイスホッケーと同じ氷上スポーツとはいえ、求められるものは微妙に異なる。
ストップ、ターンなどスケートのエッジワークは変わらない……むしろアイスホッケーの経験が生かされるが、アイスクロス独特の波打つウェーブのセクションはアイスホッケーにはない要素だ。それでも魅力的に見えた。速さ、高さ、過激さを醍醐味とするエクストリームスポーツが山内の心に火をつけた。
シーズン中は週の大半をアイスホッケーの練習に費やし、技術や戦略を磨いた。アイスホッケーの練習がない日はアイスクロスの練習にあて、六甲のスケートパークまで足を運び、インラインスケートでアップダウンの動きを徹底的に体に覚えこませた。「平均で1日7時間くらい」という練習量も、「大変だった」と苦笑いするが、それでも決して苦には感じなかったと言う。
アイスクロスに専念するという決断。
「アイスホッケーの練習が終わると24時過ぎていて、1時間かけて帰宅して。そこからお風呂に入ったりいろいろしていると、寝るのはさらに遅い時間に。きつかったけどすごく充実していましたし、楽しかったです」
昨年12月末には16年間続けてきたアイスホッケーに競技者としての区切りをつけ、今後はアイスクロスの選手として活動していくことを選択した。ただ、アイスクロスだけで食べていけるような世界ではない。トップライダーでさえも「会社に勤めていたり、自分でブランドを立ち上げている方々もいる」という。
「現実的には働きながら競技を続けていく感じになると思いますが、僕自身は働きながらスポーツができるというのもいい環境じゃないかなと思っているんです」