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伊藤ふたば「たくさん吸収したい」
追い続ける女王・野口啓代の背中。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byItaru Chiba
posted2020/02/11 08:00
ボルダリングジャパンカップ決勝、誰もクリアできなかった第3課題を突破し、笑顔を見せる伊藤ふたば。
「勝ち負け」よりも「登りたい」
緊迫した雰囲気でも、笑顔を見せるシーンが目立った。
「タイトルを気にしすぎると、そこばかりに集中してしまって緊張したり、その課題を楽しめない。最高のパフォーマンスを出せたらいいなと考えていたので、1課題、1課題、向き合っているという感じでした」
完登すれば優勝の最終課題でも、「勝ち負けというより、この課題を登りたいというふうに考えていました」と自然体で臨んだ。
「(前回の優勝は)かなりまぐれだったけれど、今日はしっかりと実力もついて、強くなって優勝できたと思う」と伊藤はうなずく。第2課題こそ完登できなかったが、「その後に気持ちを切り替えて臨めたことが良かったと思います。そういったメンタル面での成長を感じることができました」と手応えも感じていた。
野口啓代は憧れでもあり、目標。
W杯で多くの経験を積み、時間の使い方やムーブの読みも磨かれた。
「世界のトップ選手と一緒に登ることで刺激を受けましたし、自分がここまで強くなれば戦えるとか、自分には今なにが足りていないのかを明確にすることができた。そういった部分を集中して補っていくことで、タイトルが取れるようになってきているんじゃないかと思います」
とくに、BJCでタイトルを争った野口は、伊藤の中でも大きな存在だ。
「啓代ちゃんは、ずっと世界のトップにい続けている選手。まずはそこを超えないと世界で勝てない」
自身が競技を始める前から、日本のスポーツクライミングの第一人者として活躍していた女王の存在は、憧れであり目標。野口に追いつきたい一心で、その背中を追い続けてきた。