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伊藤ふたば「たくさん吸収したい」
追い続ける女王・野口啓代の背中。

posted2020/02/11 08:00

 
伊藤ふたば「たくさん吸収したい」追い続ける女王・野口啓代の背中。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

ボルダリングジャパンカップ決勝、誰もクリアできなかった第3課題を突破し、笑顔を見せる伊藤ふたば。

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph by

Itaru Chiba

 スポークライミングのボルダリングジャパンカップ(BJC)の女子決勝。2017年大会を史上最年少で制した伊藤ふたばが、東京五輪代表に内定している野口啓代や野中生萌らを抑え、3年ぶり2度目の優勝を飾った。

 伊藤は準決勝をただ1人「4課題全完登」で1位通過すると、6人で争われた決勝でも終始冷静なトライを見せる。第2課題こそ完登できなかったが、続く、第3課題で勝負強さを発揮した。

 選手たちの前に立ちはだかった第3課題の難関。スラブ(緩傾斜)のスタートが難所となり、悪戦苦闘した。野口や野中らもダイナミックにムーブを試みるが、結局、攻略はできなかった。

 全員が失敗して迎えた3つ目の課題。他の選手の競技の様子は見られないが、伊藤は会場の雰囲気で察した。

「みんなができてない課題を完登するのは大きいと思いますし、ゾーンを取れるだけでもかなり違ってくる。自分が有利な位置に立つには、3課題目を登ることだなと感じていました」

「自分自身と、課題と向き合えた」

 いよいよ第3課題がスタート。伊藤はまずルートをじっくり見極めた。

「見た目だとじわじわいくのか、コーディネーションで行くのか分からなかったのですが、壁に入って、実際にトライしてみて、ホールドに対していいポジションにもっていくことを意識していました」

 野口でさえ「登り方が最後までわからなかった」という課題。思い切って繰り出したムーブがピタリと止まり、伊藤はそのまま完登。ゾーン獲得の差で首位に踊り出た。

 最終課題は巨大なハリボテの先端をめがけ、大ランジでスタート。2トライ失敗してたが、3トライ目で「気持ちでゴリ押しした感じだった」というパワーが消耗する中間部をなんとか突破。同じく、3つの課題を完登していた野口を、ゾーン獲得数の差で上回り、3年ぶりに女王の座に返り咲いた。

「決勝が始まる前は、(競技順が)最後ということですごく緊張するのかなと思ったんですが、始まってみたら普通に、そこまでプレッシャーを感じることもありませんでした。自分自身、そして課題と向き合えたことが良かったんだと思います」

【次ページ】 「勝ち負け」よりも「登りたい」

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