リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
レアル育ちのグラネロが“3部”へ。
「重視したのは年俸じゃなく……」
posted2020/02/09 11:50
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
1部のクラブから下位リーグのクラブへ望んで移る選手など、いるはずがない。普通はそう考える。
だからこそ、1月30日に明らかになったエステバン・グラネロの決断は、今冬の移籍に関する最大のニュースとなった。
R・マドリーのカンテラで鍛えられ、トップチームやヘタフェ、R・ソシエダに加えて、当時プレミアに所属していたQPR(クイーンズパーク・レンジャース)でもプレーしたグラネロがエスパニョールの一員となったのは2017年7月。リーダーシップと豊富な経験をもって間もなく選手のまとめ役となり、昨季はルビ監督に重用されてクラブにとって13年ぶりとなるEL出場権獲得(リーグ7位)におおいに貢献した。
ところが今季はチームが機能せず、グラネロは出番を減らして活躍もなし。てこ入れを余儀なくされたクラブは昨年末に今季2度目の監督交代を行い、大金をかけて追加戦力を獲得し、チームの立て直しを始めた。
エスパニョールのために身を引く。
グラネロはその一環として今年6月末まで残っていた契約の解除を打診されて、熟考の末に承諾した。
「クラブはいまチームを構築している。俺自身正しいと思う方向へ大変な努力をしている。明日のエスパニョールは昨日のエスパニョールより強い。そこに俺の名前はないけれど……」
クラブのために、チームのために、自分は身を引く。
退団会見の席で、切なさが滲み出る面持ちで語ったグラネロの頭にはアベラルド新監督のプレースタイルと自分の相性の悪さもあったのかもしれない。
驚いたのは移籍先だ。彼が選んだのは1部でも2部でもなく、さらに下の2部Bリーグのクラブ、マルベージャだった。