スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
香川真司がマドリー戦で覆した
「期待外れ」の声と、潜む悔しさ。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2020/02/07 11:50
クロース、マルセロ相手にも臆さない。マドリー戦で見せた香川のプレーぶりには、経験値の高さを感じた。
期待外れの評価を覆す孤軍奮闘。
最初の見せ場は23分。ペナルティーエリア手前で寄せてくるマーカーを左にかわし、左足で惜しいシュートを放った。30分にはアンドレ・ペレイラとのパス交換で右サイドを突破し、自ら中央に持ち運んで強引にシュートを狙った。
得点源のルイス・スアレスが投入された後半はさらに多くのチャンスに絡んだ。78分には絶妙なスルーパスを通し、スアレスがGKと1対1になる決定機を作り出している。
複数の相手選手に囲まれ、厳しいチェックを受けながらも鋭いターンでマークをかいくぐり、確実にボールをキープしながらパスを捌く。そうやって攻撃を組み立てながら、アタッキングサードでは積極的にシュートやラストパスを狙っていく。
いずれも相手GKの好守やDFのブロックに阻まれたものの、大物相手に孤軍奮闘したこの日のパフォーマンスには、「期待外れ」の烙印を押していたスペインのメディアやファンの評価を覆すほどのインパクトがあった。
マドリーは未知なる怪物ではない。
しかし、それも香川の慰めにはならなかったのではないか。
ドルトムントやマンチェスター・ユナイテッド時代にCLでの対戦を経験している香川にとって、マドリーは「未知なる怪物」ではない。
相手の脅威も、自身が通用する部分も既に分かっている。だからこそ「惜しい」で終わらせるのではなく、目に見える結果を出したかったはずだ。
試合後、香川は取材エリアに姿を見せず、翌日に以下の一文をツイートしている。
「率直にレアルは強かった。かなり悔しいがまた次に向けて戦い続けるだけ」
健闘はしたが、結果は0-4。そもそもコパが舞台では、ベストメンバーで戦うことすら許されなかった。そういった現実もまた、悔しさの一因となったのかもしれない。