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G大阪の秘密兵器は“FW”小野瀬康介。
宇佐美貴史を超えるというリスペクト。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byMasaki Shimozono
posted2020/02/06 11:30
昨年まではサイドが主戦場だった小野瀬(右)。今季は尊敬する宇佐美との2トップが見られるかもしれない。
タメを作り、守備意識も高い。
開始早々の4分、宇佐美からのクロスを受けてヘディングで先制点を叩き出すと、23分にはお返しと言わんばかりに、絶妙なクロスで宇佐美のヘディングシュートをお膳立て。この試合が2トップを組んで2試合目とは思えないほど、息の合ったプレーを見せていた。
ボールロストを恐れないアデミウソンの相手DFを剥がすドリブルも魅力だが、小野瀬は体を上手く使いながら、ボールを失わずタメを作り出せるアタッカーである。
「康介も前線でやれる技量とフィニッシュの精度とスピードを持っているし本当にやり易い」(宇佐美)
とりわけ秀逸なのが、昨年まで右サイドで見せてきた守備意識の高さである。
今季はより前線から積極的に相手ボールを奪いに行くサッカーを志向する宮本監督。小野瀬のFW起用はそのシュート力を生かすだけでなく、ファーストディフェンダーとして守備のスイッチとなることを期待したものだった。
京都サンガ戦では宇佐美が猛然とプレスを敢行し、パスコースを制限すると連動した小野瀬が高い位置でボールを奪取。まだチーム全体の連動性には課題を残しているものの、和製2トップは攻守で息の合ったところを見せはじめている。
「あの人を超えたいんで」
もっとも、小野瀬自身に満足感はない。京都サンガ戦での1得点2アシストは全て宇佐美との連係から生み出したものだったが、試合後の小野瀬は開口一番に、4得点の「ライバル」を意識していた。
「僕よりも隣に凄い点を取っている人がいたので、負けたくない。チームとして競争できているのはいいことだと思いますけど、やっぱり負けたくないですね」
キャンプを終え、帰阪したガンバ大阪は2日間のオフを終え、2月4日に再始動。全体練習後のクラブ練習場には居残りでシュート練習に汗を流す小野瀬と宇佐美の姿があった。
宇佐美に負けない鋭いキックを繰り出す小野瀬にシュートの上手さを指摘してみた。
帰ってきた言葉はただ一言、「あの人超えたいんで」
リスペクトありきのライバル心――。オファーをくれた前年王者とのJ1リーグ開幕戦で「秘密兵器」がそのベールを脱ぐ。