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レアル優勝も出場クラブは負担大。
スペインスーパー杯サウジ開催の謎。
posted2020/01/17 11:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
「大会を止めるか、より魅力的な方式を考えて人々の関心を高めて収益を増やすか。道は2つあった」
2019年のスペインスーパーカップを、2020年1月にサウジアラビアで開催するわけを問われたスペインサッカー協会のルイス・ルビアレス会長は、物議を醸す自身の決断を正当化した。
「国外へ出ることにしたのは確かにお金のためだ。しかし、それらのお金は我々にとって大きな助けとなる。2部Bや3部リーグの発展、選手育成、女子サッカーの環境改善などのために使われるからだ」
前季のリーガ王者と国王杯王者の対戦を協会が「スペインスーパーカップ」の名の下で開催するようになったのは、1982年のことである。
ホーム&アウェー方式で、日程は当初出場する2クラブの協議によって決められていた。それゆえリーガ王者だったR・マドリーが「空いている日が見つからない」ことを理由に希望日を挙げなかったことで、1986年と'87年は大会自体がキャンセルされている。
また、1984年と'89年はいずれもリーガ王者と国王杯王者が同一クラブであったため、前者ではA・ビルバオ、後者ではR・マドリーが試合をすることなくスーパーカップ王者となっている。
タイトルとして高まらない価値。
1994年以降、協会は試合日をリーグ開幕前にすることを義務づけた。'96年からは前年の2冠獲得クラブが自動的に王者となるシステムも廃止されて、その際には国王杯準優勝クラブにリーガ王者への挑戦権が与えられるようになった。
その後スーパーカップは8月の風物詩となり、メディアやサポーターにとっては新たなシーズンの展開を占う指標のひとつにもなったが、タイトルとしての価値が高まることはなかった。勝ったクラブは一応胸を張り、増えた星を自慢するけれど、負けた方は2試合をプレシーズンマッチと捉え直し、悔やむことなく敗北を忘れてしまう。
スペインの8月はバカンス期間なのでサポーターの入りも悪い。スタンドを埋めるのはもっぱら他国から遊びに来ている観光客だ。