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田中恒成、キャリア最高のKO勝利。
「俺だって現役、尚弥さんを超えたい」
posted2020/01/07 11:30
text by
森合正範Masanori Moriai
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
右アッパーから左アッパー2連発でテンカウントを聞かせた。
2019年大晦日のWBO世界フライ級タイトルマッチ。勝者となった王者・田中恒成(畑中)はコーナーポストへ駆け上がり、「これが俺のボクシングだ!」と言わんばかりに観客へアピールした。挑戦者のウラン・トロハツ(中国)は大の字になったまま。2分近く立ち上がってこない。
そんな凄惨なKOシーンを目の当たりにし、約2カ月前に聞いたある言葉を思い出した。
「すごい評価なんだけど、それ以上の結果を残していく。この人は『凄いな』と思われながら、いつもそのイメージよりも上の内容と結果で勝っていくんです」
田中の井上尚弥に対する評だった。
井上を評したように、この日の田中もまた戦前に予想された勝ち方を超えていった。
毎試合、10kgを超えていた減量。
序盤から切れ味鋭い左ジャブ、右ストレート、連打も速い。初回から支配し、左ボディーを打ち込む。何度も左をねじ込む。
3回。これまでのボディーが伏線となり、相手に腹を意識させて、「(顔面が)空いたな」と瞬時の判断で右アッパーから左アッパーのダブル。そこにいたのは、これまでとは違う、圧倒的な田中恒成だった。
「体調がいい状態で試合に臨んだことがほとんどない。今回は少なからず今年で一番良かった。その最大の要因は自覚ですかね。俺もそろそろ一皮むけたい。そこを邪魔していたのが減量だったので」
試合後、控え室で「自覚」を強調した。これまで減量が厳しく、パフォーマンスよりも、体重を落とすことが目的になっていた。今回は食事の管理とともに、早めに体重調整に取り組んだ。試合前の減量で10kg以下だったのは初めてだったという。