酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イチローの「惜しい記録」って何だ。
データで総ざらい、2019年の野球。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/12/31 11:30
イチローの現役最後の試合が今年のことだとは思えない。それくらい2019年もまた、野球が日本中を沸かせた1年だった。
ジョンソン、宮西、五十嵐は中継ぎの鑑。
【阪神ジョンソン、1年限定の超快投】
奪三振つながりでいえば、今年最もキレッキレの投球を見せたのは、阪神のこの投手だった。
<2019年NPBで50イニング以上投げた投手のK9、5傑>
1 ジョンソン(神)13.98
(58.2回91奪三振)
2 松井裕樹(楽)13.84
(69.2回107奪三振)
3 藤川球児(神)13.34
(56回83奪三振)
4 モイネロ(ソ)13.05
(59.1回86奪三振)
5 石川直也(日)12.43
(54.1回75奪三振)
どの記録もすごいが、ジョンソンは58試合に投げて失点した試合はわずかに8試合。あとの50試合は完璧におさえた。そしてアウトの51.7%を三振でとったのだ。おそらくこの投手がマウンドに上がると相手打線には半ば諦めムードが漂ったはずだ。
このジョンソンと藤川の組み合わせは往時の「JFK」以来最高の「勝利の方程式」だったと思う。
元巨人マイコラスの成功以来、MLBはNPBの外国人投手に注目している。1シーズンでアメリカに帰ってしまったが、ジョンソンは記録にも記憶にも残る活躍をした。
【現代の鉄人、宮西と五十嵐】
今年のNPBでの大記録といえば、日本ハム、宮西尚生の「300ホールド」だ。2018年限りで引退した巨人、山口鉄也の273ホールドを昨年抜き、今季は2年連続の最多ホールドとなる「43」を記録。あとは一人旅で記録を伸ばしていく。
宮西は2008年にプロ入りして以来12年連続で50試合以上登板。毎年同じような成績を上げている。救援投手は「怪我、故障のリスク」との戦いだ。ほとんどの投手が登板過多で潰れていく中で、宮西は何事もなかったかのように投げ続けている。これこそ「鉄人」ではないか。
今季終了時点で684試合に投げているが、宮西は一度も先発のマウンドに立っていない。根っからの救援投手だ。これもすごいことだ。
この記録で宮西の上を行く投手がただ1人。今季からヤクルトに復帰した五十嵐亮太だ。五十嵐は1999年のデビュー以来、MLBでの3シーズンを挟んで822試合に投げているがすべて救援。松坂世代の1歳上、来季は41歳になるが、彼も鉄人だと言えよう。
ここ近年の投手の記録は、どうしても救援投手が中心になる。それは仕方がないところだろう。
とはいえ来季はヤクルトに奥川恭伸、ロッテに佐々木朗希と本格派の先発投手が入団する。すぐには無理だとしても、近い将来、すごい記録を作ってくれることに期待しよう。