野球のぼせもんBACK NUMBER
「王さんが福岡の街を変えたんです」
気配りの男・城島健司が帰ってきた。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2019/12/29 11:50
城島にはメディアが殺到。「いつもは1台のカメラの前で魚を持ってる」とおどけた。
野球との心の距離は離れていなかった。
会見の中でも語られていたが、王貞治球団会長から毎年熱心な誘いがあった中で、今回は「新しい役職まで作っていただいて」などの要素が含まれたこともあり、ついに首を縦に振る決断をしたという。
かつて一緒にプレーをした和田毅や明石健志、同じ捕手の甲斐拓也から歓迎の声が上がっている。昔から熱心に応援していた九州のファンも歓喜している。
しかし、現状のホークスについては「正直、まったく分からない」と城島氏。“城島のことは大好きだけど、大丈夫なのか”。そんな声も聞こえてきそうだが、心配は無用だ。
物理的に野球から離れた日々を過ごしていただけで、心の距離は決して離れていなかった。城島氏と親しい知人によれば、しばしば食事を共にする際のほとんどが野球談義だという。
「世間では野球を全然見ていないなんて言われているけど、そんなことは全くない。“プロの視点”でいつも話をしてくれていた」と断言してくれた。
「ホークスを作ったのは王さん」
また、少しアルコールで顔を赤くした城島氏がいつも口にしていたのが「王さんの考えや思いを継承していかないといけないんです」という熱い思いだった。
それは会見の中でも十分に語られていた。
「ホークスは今、福岡の街に認知されていて、応援されています。それを作り上げたのは王さんだと思ってるんです。僕たちがまだ弱かった時、お客さんもたくさんいなかった時、率先してファンを集めるとか。ほんとに1人でされていた。
僕がプロに入った時は練習中にファンの人にサインしていたら『早く次の練習に行け』って怒られていたのを『積極的にサインしなさい』と言われたのが王さんでした。そのような部分は今も引き継がれていると思うんです。だから今の素晴らしい球団、ファンから愛されるホークスがあると思っています。
それは今や未来の選手に続けていってもらわないといけない。僕はホークスが変わっていくのを王さんと一緒にやって見ていた。この球団は王さんの考え方が根本にあるチームなんです。向こう10年、20年、30年と続けていけるような、何かそういう手助けをできればなと考えています」
強いということが、スポーツにおいて最大の魅力であるのは間違いない。だが、試合に勝つことがすべてではない。人に、そして街に愛される選手、そしてチームに。そして野球というスポーツそのものがかけがえのない存在であるために。