オリンピックへの道BACK NUMBER
始まりは足立区のスーパー屋上から。
トランポリン・森ひかるの勝負強さ。
posted2019/12/08 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
東京五輪イヤーまで気づくとあと1カ月をきった。
さまざまな競技で、実際にオリンピックの会場となる競技場を舞台にテスト大会が行なわれ、また、代表選考の対象となる大会が実施されている。
全体を見渡すと、成績面で底上げされている競技も少なくない。
そう思わせたのは、先日、世界選手権が行なわれたトランポリンだ。
東京五輪会場の有明体操競技場のこけら落としとなった今大会は、各選手にとっては東京五輪への出場権のかかった大会でもあった。
いくつもの重圧がかかっておかしくない中、際立っていたのは、女子個人で優勝した森ひかるだった。
日本は、決勝で日本人最上位の選手を五輪代表の1枠目に内定すると定めていた。
知らぬ間に涙があふれることも。
そうした状況の中、森は決勝で3回転宙返り半ひねりの大技を決めるなどして、堂々、世界選手権優勝。東京五輪代表の座を射止めた。
「びっくりです。信じられない」
とは森本人の言葉だが、勝負強さが光った試合でもあった。
決勝に進んだ日本選手は森だけではない。ここで内定を得るためには、自分が日本勢最上位に入らなければいけない。当然、プレッシャーは大きくなる。
当日ばかりではない。プレッシャーは、大会前から大きかった。直近の1カ月は、思うように眠ることもできず、知らぬ間に涙があふれることも珍しくない状態にあったという。
それを乗り越える力となったのは、これまでトランポリンに注いだ時間にほかならない。
森がトランポリンに出会ったのは4歳のとき。地元の足立区のスーパーの屋上にあったトランポリンで遊んだ。