“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
北九州J2昇格の“エンジン”高橋大悟。
清水を離れ、先輩の言葉を胸に。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/11/28 20:00
清水から育成型期限付き移籍で北九州にやってきた高橋大悟。夏の加入後、すべての試合に先発出場するなど、J2昇格に大きく貢献した。
困難に耐えながら、凛と立つ。
「試合を重ねていくうちに、ギラヴァンツをJ2に昇格させたいという気持ちが凄く強くなったんです。こんな僕を温かく受け入れて、(監督・小林)伸二さんが僕を必要としてくれて、信頼して使ってくれた。それに応えないとプロサッカー選手として情けないと思えた。それに故郷の屋久島の人たちに元気にプレーしている姿を見せたかったし、結果を伝えたかった思いも相当ありました」
縄文杉に代表される屋久島を象徴する「屋久杉」。島のシンボルであり、島民たちだけでなく、訪れた人たちの心を大きく包み込んで癒しを与えてくれる。そんな屋久杉は1000年以上の太古からその地に根を張り、数々の災害などの困難に耐え続けながら、その弱さを一切見せることなく、力強く幹と枝葉を凛と立たせている。
「屋久杉は僕の中でも大切な存在。屋久島の人間として常に誇りに思っています」
彼自身もまた多くの困難に向き合い、前進しながら島を象徴するプロサッカー選手として、大きな幹と枝葉をプレーで表現する。屋久杉が高橋大悟にとって大きな心の支えになっているように、活躍できれば「屋久島の人たちに元気を与える存在」になることができる。
J3優勝で終われるように。
「僕が24歳、25歳になった時、『この移籍があってよかった』と思えるようにしたい。これから先どうなるか分かりませんが、大事なのは自分を見失わないこと。屋久杉のようにどんなことがあっても根を張り、成長し続けることだと思っています。だからこそ、残り2試合を勝って4連勝、そしてJ3優勝で終われるように、ギラヴァンツのために全身全霊を尽くしたいと思います」
彼はまだプロ2年目の20歳。何かを成し遂げたわけではないし、これから先のサッカー人生には今以上の数多くの逆風が待ち受けているだろう。ただ、凛と立つためには、それが必要であることを彼自身はよく理解している。
逆風すべてを力に変える。
「屋久島の純真」は北九州の地でありのままの自分を表現しながら、這い上がるためのリスタートを力強く踏み出している。