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おしゃべりな王者と沈黙の挑戦者。
内藤哲也「2冠」の野望達成への壁。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/11/26 11:50
ジェイ・ホワイトに挑発され続けるも、沈黙を貫く内藤哲也。あれだけ饒舌だった内藤の不気味な無言劇は、今も続いている。
インターコンチはIWGP挑戦のチケットとして。
ホワイトは新日本プロレスをけん制する形で不満をあらわにし続けている。
「インターコンチネンタルのベルトは、IWGPヘビー級王座への挑戦チケットとして大切に使わせてもらうよ。東京ドームで内藤に3連勝して、翌日にIWGPも取ってオレが2冠王になるんだ」
ホワイトはこの2年間でかなり成長した。のらりくらりした試合運びだけでなく、さらにずるがしこさも増した。筆者は時折、その姿にかつての世界王者リック・フレアーのイメージを重ねてしまうことさえあるくらいだ。
11月23日の川崎大会でホワイトは試合終了後、内藤に場外で翻弄された。だが、内藤に追われてピンチに陥ると、観客席の幼子を抱きかかえて「人質」にとって、タテのように前に突き出して内藤の攻撃を回避した。
内藤はどんなにホワイトに挑発されても言葉を失ったように、沈黙の日々を送っている。
それは、ホワイトばかりかオカダや飯伏にまで横取りされてしまうかもしれない「2冠という偉業」を果たすための意図的な、怒りのエネルギーを溜めるための長い沈黙に思えるのだが……。