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横山典弘が語るデットーリの凄み。
「どんな騎乗をしても驚かない」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/11/20 18:00
デットーリは来日して11月24日のジャパンカップ(GI)でルックトゥワイス、12月1日のチャンピオンズカップ(GI)でオメガパフュームに騎乗予定だ。
不振脱却、エネイブルと名コンビ。
それ以降の彼の実績は枚挙に暇がない。本場イギリスのダービーやキングジョージVI世&クイーンエリザベスS、凱旋門賞にブリーダーズCといった世界中のビッグレースを次々と制覇。'96年にはアスコット競馬場で開催された全7レースを全て優勝し“マグニフィセントセブン”と呼ばれる奇跡をも達成した。
大馬主のゴドルフィンと専属契約を解消した後、一時期スランプに陥ったが、そこは実力のあるジョッキー。イギリスの伯楽ジョン・ゴスデンを始めとした有力調教師やオーナーがすぐに声をかけた事で復活した。
近年は騎乗するレースを大レースに絞っているため以前ほど多くの数を勝つ事はなくなったが、ビッグタイトルに限ればエネイブルによる凱旋門賞連覇('17、'18年)など、全盛期と変わらない勢いで制している。
横山騎手とて日本ダービーを2勝('09年ロジユニヴァースと'14年ワンアンドオンリー)している他、有馬記念や天皇賞、皐月賞に菊花賞など、数々のビッグレースを含む2800勝近くを挙げている名騎手である。
「一緒に乗れたらそんな幸せはない」
しかし、過去に自分が積み上げて来た実績に関しては多くを語ろうとしない。それどころか、そもそも多弁な人ではない。そんな彼が、デットーリ騎手の話となると、立て板に水の如く雄弁に語る。一流の成績を残すトップジョッキーをしても、そのくらい心躍らせる存在が、デットーリ騎手なのである。
横山騎手は言う。
「ただでさえ(クリストフ・)スミヨン、(ライアン・)ムーア、(オイシン・)マーフィー、(ウィリアム・)ビュイックが来ていて、日本人ジョッキーにとっては大変だけど、フランキーの騎乗を目の前で見られるのは長い目で見れば良い事。まして一緒に乗れたらそんな幸せな事はないよ」
自分としては楽しみで仕方がないと続けた彼に、どのあたりを見たいのか? と聞くと次のように答えた。
「どこを見るとかじゃありません。全部を見たい。これぞ世界の一流のスーパージョッキーという騎乗の全てを見たいし、ファンの皆や若いジョッキー達にも見てもらいたい」
先述したように横山典弘騎手とて名手である。彼の騎乗がたびたび競馬ファンをアッと言わせて来た事は皆さんご存知だろう。しかし、次のように続けるのだ。
「ありがたい事に皆『ノリはどんな騎乗をして驚かせてくれるのか?!』とか言ってくれます。だけど、フランキーの場合、どんな騎乗をしても驚かない。皆が考えていないような手綱捌きで勝ったとしても『フランキーなら考えられたな……』という感じに思える。そんなジョッキーは他にいないと思います」