ゲッツェが口にしていたこと。

　失意の交代をした選手に歩み寄る。手を差し伸べる。声をかける。その場ですべてを受け入れられないことだって往々にしてある。でも、そうしたときに、自分に対して気を配ろうとしてくれた、ということは選手の心にしっかりと残る。それが信頼となり、プレーの意欲へとつながっていく。

　出場機会がまったくない時期、ゲッツェはこんなことを口にしていた。

「ピッチに立っていようが立っていまいが、チームの成功に貢献することはできると思う。難しいことかもしれないけど。もちろん、ピッチでチームを助けたいけど……」

　どんな状況でも、自分にできることを探し、チャンスを与えられれば最大限のプレーにチャレンジしようとする。ゲッツェだけではない。選手はみんな必死に戦おうとしている。ダービー戦での一件から、ファブレも自分の指導のあり方を考え直したようだ。

　前述のインテル戦では、アルカセルと交代でベンチに戻ったゲッツェにファブレ監督が歩み寄り、健闘を称えていた。これまでになかったファブレの姿だ。向き合って気持ちを込めて話をする。ダービーのときには見られなかった、だが、ファンも選手も望んでいた監督としてのあり方である。

バイエルン戦ではミュラーが爆発。

　いい雰囲気のまま迎えたバイエルンとのトップゲームでは、好ゲームが期待されたが、監督交代で普段以上に気合いの入っていたバイエルンに序盤から圧倒されてしまった。

　この日スタメン出場したゲッツェも前半途中までボールに絡んだが、レバンドフスキに先制ゴールを許した後はチーム全体が完全に飲み込まれてしまった。パスがまったく出てこない。結局、60分にロイスと交代。かつてのホームで、足取り重くピッチを後にした。ドルトムントは、まったくいいところがないまま0－4の完敗を喫した。

　この日、トーマス・ミュラーはバイエルン通算500試合出場達成を祝うメモリアルデーでフル出場を果たし、2アシストのほか、躍動感あるプレーでチームを勝利に導いた。

　ほんの少し前まで、ゲッツェと同じくベンチ生活を強いられた期間があった。バイエルンの遺伝子を誰よりも濃く引き継いでいる男に、移籍話が度々浮上する。しかしミュラーは復活し、大事な試合で何度もゴールへの道を作り出していた。

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