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ビジャが残した華麗なゴールたち。
メッシ、ペップが信頼した男の功績。
posted2019/11/14 11:30
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Getty Images
11月13日、ヴィッセル神戸のFWダビド・ビジャが電撃引退を発表した。
その数日前に記者会見のリリースが送られていたのだが、まさかこの発表だとは思ってもみなかった。
スペイン代表で長年盟友だったフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)が夏に引退し、それを追うようにビジャも――。ビジャが加入した2019年当初にそれを想像した人は、そう多くないだろう。いや、シーズンが進む中でも、か。
引退会見の配信映像を見てみると、ビジャは「チームに貢献するゴールも決められていたが、自分の意思で引退したい」と語っていた。この言葉通り、ビジャはJリーグの舞台でもビジャだった。
第31節終了時点で26試合12ゴール。90分間での平均得点は「0.545」はJ1トップクラスの数字だ。また得点ランキング首位のマルコス・ジュニオールとは3点差。残り3試合で固め打ちできれば、決して追いつけない数字ではない。
パターンの多彩さ、高いアベレージ。
実際、ビジャのゴールパターンは多彩だった。相手マーカーに尻もちをつかせるドリブルシュートやポジショニングで奪うダイレクトシュートと、どういった形でも得点の匂いを感じさせた。試合後に対戦相手などから「ビジャは(マーカーの)視線から消えるのが本当にうまい」、「年齢を感じさせない切れ味でした」というコメントを聞いたことがある。37歳にしてなお健在であることを証明したのだ。
数字、証言を踏まえれば来シーズンも見られるんだろうな、と勝手に思っていたが、最終的には本人の意思である。寂しいとはいえ、最後の花道を鮮やかに飾ってほしいと心から願うばかりである。
あらためて書く必要はないと思うが、ビジャは2000年代後半から2010年代前半にかけて世界最強の点取り屋の1人だった。スペイン代表を本当の“無敵艦隊”にした'08年欧州選手権優勝、南アフリカW杯でのスペイン初優勝の主要メンバーで、両大会で得点王を獲得した。スペイン代表でも歴代通算最多の59得点を挙げた。
そして、これらのよく知られている実績や数字以上に偉大だなと感じるのは、長期間、高いアベレージでゴールを奪い続けてきた点である。