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『氷艶』準備中のトライアウトで決意。
高橋大輔が語ったアイスダンス転向秘話。 

text by

野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2019/11/12 11:50

『氷艶』準備中のトライアウトで決意。高橋大輔が語ったアイスダンス転向秘話。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

年末に全国の劇場で公開される『氷艶hyoen2019-月光かりの如く-』のディレイ・ビューイング先行上映会の舞台で、高橋大輔はにこやかに稽古時の秘話を披露した。

「自分が大声を出すのも恥ずかしくて」

 氷艶では台詞やラブシーンにも挑戦。その指導役は、俳優の福士誠治だったという。

「福士さんから『台詞は読むんじゃなくて、相手に飛ばすように。相手の台詞を聞いて、自分が反応する。台詞はキャッチボールだから』と言われました。自分が大声を出すのも恥ずかしくて、最初のうちは自分の大声にびっくりして真っ赤になっていました」

 また話題ともなったのが、高橋による生歌のシーンだった。

「歌のシーンは、一度は録音もしたのですが緊張していて、かえって練習より上手くいきませんでした。『もう一度録り直しだろうな』と思っていたら『生でいく』と言われて。何千人の前で、自分のカラオケレベルの歌を披露するなんておこがましいと思いました。でも本番は、うまい下手は別にして、すごく気持ち良く歌わせていただきました(笑)」

 本番ならではのハプニングもあった。

「光源氏の笛が、大事な意味を持つ道具として登場するのですが、それを殺陣のシーンで落としていたんです。笛を吹くシーンで、懐に手を入れたら『無い!』って。『笛が無い、かっこいい笛の吹き方って何だ?』と頭がグルグルまわって、『もう雰囲気でやるしかない』って、手を口の横にあてて誤魔化しました。後でキャスト全員に大爆笑されました」

「1人では知らなかった感覚ばかり」

 氷艶の準備期間中には、競技生活を左右する大きな決断もあった。7月に行われた新潟での強化合宿中に、生まれて初めてアイスダンスのトライアウトをしたのだ。

「村元哉中さんに以前から誘われていたこともあり、合宿中に2人でトライアウトをしたんです。でも皆には言えないので、朝7時の練習より前に(秘密の)貸し切りをとって、皆が来る頃には何も無かったかのように振る舞っていました」

 初めて体験したアイスダンスは、高橋にとって衝撃的な体験だった。

「今までやってきたスケートとはまったく別もので、1人では感じられない体感でした。1人で滑ると、エッジの傾斜には限界がありますが、隣に相手がいると引っ張ってくれるのでもっと傾けることが出来る。お互いが引っ張りあうことで、すごい加速が出たり、1人では知らなかった感覚ばかり。すごく面白くて、これをマスターしてみたいなと思いました。『哉中ちゃんはどうだった? 僕はすごく面白かったんだけど』と伝えて、氷艶の練習期間中にアイスダンス転向を決めました」

【次ページ】 「僕が相手じゃダメ。哉中ちゃんの才能が潰れる』と」

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