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『氷艶』準備中のトライアウトで決意。
高橋大輔が語ったアイスダンス転向秘話。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byShigeki Yamamoto
posted2019/11/12 11:50
年末に全国の劇場で公開される『氷艶hyoen2019-月光かりの如く-』のディレイ・ビューイング先行上映会の舞台で、高橋大輔はにこやかに稽古時の秘話を披露した。
「僕が相手じゃダメ。哉中ちゃんの才能が潰れる』と」
周囲からすると突然のアイスダンス転向のように感じられるが、もともと高橋はアイスダンスを観戦するのは好きだった。
「長野五輪の時から、アイスダンスは大好きで観ていました。特に、フランスのマリナ・アニシナ&グウェンダル・ペーゼラが好きでした。独創的で個性的で、とにかくカッコイイ。僕もいずれ趣味でアイスダンスをやろうとは思っていました」
村元からのオファーがあったのは、今年の1月。すぐに決断できないまま、氷艶の準備期間でのトライアウトまでは迷っていたという。
「ここ3年ほど、アイスショーや氷艶などに出演させていただいて、ストーリー性が絡むものを作り上げるには、1人だと出来ず、人と組むことが必要だと肌で感じていました。なのでタイミングよくオファーがあったのですが、初めは『もっと(アイスダンスが)上手で、背の高いスタイリッシュな男性と組んだ方が活躍できる。僕が相手じゃダメ。哉中ちゃんの才能が潰れる』と思いました。一方で、彼女のスケートが凄く好きだったので、他の人だったら本気でアイスダンスをやろうとは思えませんでした」
「彼女となら、色々な幅のある表現が出来る」
高橋がそこまで情熱的に語るのも無理はない。村元は21歳になった2014年にシングルからアイスダンスに転向。ダンス歴は短いながらも、平昌五輪は15位、'18年世界選手権では日本歴代首位となる11位を記録した。それほど日本人離れした、演技力溢れる女性なのだ。
「哉中ちゃんはシングルの頃から、動きのラインが綺麗で、髪の毛一本まで意識が行き届いているような動きをする選手でした。簡単に言えば、僕はファン。ステップなどは(浅田)真央ちゃんに似た、魅力的な表現をしていました。ダンスに転向してからさらに表現力が開花していました。彼女となら、色々な幅のある表現が出来ると感じています」
今年9月に、アイスダンス転向を発表。記者会見では、北京五輪出場への決意を誓った。しかし、この日のトークショーでは少しトーンを抑えた発言に。
「いやあ、あのう……。五輪は、ほぼ不可能に近い、行ける可能性は2%くらいです。でも目標がないと頑張ることは難しいから、北京五輪を目指して頑張ろうと話し合っています。でも難しいことだとは感じています」
2人で臨んだ記者会見とは異なり、ファンに囲まれて1人でリラックスして話すうちに、彼らしい謙虚さが出た様子だった。