「すぐに抗議してくれたんですけど……」

成田「はい。国際クラス分け委員が一定数揃う、大きな国際大会でクラス分けテストは行われるので、その時は北京パラリンピックの開会式の前でした。水泳に限らず、他競技でも北京でテストが行われたんです。委員の大半は外国人なので、通訳のスタッフと一緒に部屋に入り、面談とベッドで寝た状態での筋力チェックを受けました。次に実際に4種目を泳がされて、どれくらい泳げるかを審査されたんです」

松岡「変更された理由がわかりました。それは真由美さんがそこで頑張りすぎたんじゃないですか。頑張りすぎたがゆえに、真由美さんの障がいのレベルでは決して出ないはずの数値を超えちゃったんです。そう思いませんか」

成田「さあ、どうでしょうか。複数の専門委員が見ているわけですから……。ただ、すぐに日本の選手団はその判定に対して抗議してくれたんですけど、受け付けてもらえませんでした。私も気持ちがすごく荒れたんですけど、あのとき私は女子のキャプテンをしていたので、チームをまとめないといけない、悪い空気にしちゃいけないとそれだけは強く思って……。翌日からは努めて明るく振る舞うようにしてました」

「自分自身に克てるかどうかを競う大会」

松岡「僕の勝手な思いですけど、金メダルをたくさん獲る真由美さんも素敵だけど、クラスが変わった後の真由美さんを魅力的にとらえている方の方が多いんじゃないかな。成績はもちろん大事だけど、パラリンピックは自分自身に克てるかどうかを競う大会でもあると思うんです」

成田「そうですね。北京が終わってからもまた私は入退院を繰り返して、ロンドン大会には出られませんでした。その翌年に2020年の東京開催が決まって、パラリンピックを盛り上げたいという気持ちが強くなったんです。

　自分には泳ぐことしかできないから、現役に戻ってリオ大会に出ることができたんですけど、メダルは獲れず、決勝に残るのが精一杯でした。でも、すごく応援してくれる人が増えた実感があったんですね。もし自分が泳ぐことで大会に注目が集まるなら、頑張りたいという気持ちは強いです」

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