松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
パラ水泳・成田真由美。現役を続ける
理由と東京2020への思いを修造に語る。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/11/11 07:00
2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事でもあり、現役選手でもある成田真由美。
「水泳はタイムが悪いのもすべて自分のせい」
松岡「これまでもテニスの伊達公子さんとか、現役復帰する選手は過去にもいました。でも、僕は辞めてから一度も現役に戻りたいと思ったことはないんです。僕は今の方が自分に合っていると思っています。でも、真由美さんはそうじゃない。目標に向かって自分が信じた道をひたすら突き進んでいく。生粋のアスリート気質なんだと思います」
成田「負けず嫌いだとは思います。でも、スポーツならなんでもというわけじゃなく、集団競技は苦手です。車いすバスケをしていたときも、『あなたがあそこでミスしなければうちのチームは勝てたでしょ』って思う方だったので」
松岡「ヤなやつだ(笑)」
成田「ハハハ。そう、ヤなやつなんです(笑)。でも、水泳はタイムが悪いのもすべて自分のせい。それが負けず嫌いの私には良かったのかもしれない」
松岡「復帰を決めて、何が変わりました」
成田「やっぱり練習が楽しいなって」
松岡「失礼ですけど、年齢も重ねてきて、メダル争いはますます厳しくなっている。いわば逆行しているわけですが、その逆行をどう楽しめているんですか」
成田「うーん、答えはないですね。ただ諦めないだけ。諦めるという選択肢がないんです」
松岡「でも、スポーツを楽しむならわかりますよ。ただ、それだとパラリンピックは戦えない。覚悟がないと」
成田「それはもちろん。復帰を決めたときに、また苦しい練習をするんだと覚悟しました」
松岡「続けることで何を得ようとしているのか。メダルのためでないとしたら、そこで何を感じたいのか、真由美さんの中ではそれがわかっていると思うんです。だって、それがないと戻ってくる意味がないはずですから」
成田「何でしょうね、結局、泳ぎたいという気持ちが半端ではなかったから」
「そこには年齢も一切関係ないですからね」
棟石「やり残していることがあったんだと思います。彼女はずっと、得意の50m自由形で39秒を切るのが目標でした。北京大会の後に一度は水泳も楽しい趣味になったんですけど、自国開催のパラリンピックに向けて周囲が盛り上がっていく中で、自分が忘れ物をしていたと思うようになったのかなと……。で、情熱が戻ってきたんです。やっぱり自己ベストを切れた時の嬉しさってすごいですから」
成田「そこには年齢も一切関係ないですからね」