選手に植え付けた競争意識。

「彼らはU-17日本代表で共にプレーをしてきている。世界と戦う経験をしてきている選手たちなので、クラブは違えどもお互いを良く知っているし、彼らだったらW杯の経験も含めて、グループステージ初戦までにいい状況に持っていけると思っています」

　U-20W杯の出場メンバー発表の際にも影山監督がこう話していたように、すでに年代別のW杯に出場し、結果を残した選手たちが得た経験値を生かすメンバー選考をしたのだった。

「今選ばれていても、後に選ばれる保証は一切ない」

　影山監督が継続就任したことで、この共通認識が選手たちの中に芽生えている。

　特に地球の裏側で行われるU-17W杯で、オランダ、アメリカ、セネガルと同居した「死のグループ」とを1位通過するなど、ライバルとなりえる後輩たちが世界に強烈なインパクトを与えている。彼らとの競争に打ち勝たないと、目標とする2021年U-20W杯は見えてこない。

刺激を受ける染野唯月と武田英寿。

　U-18日本代表でエースストライカー候補に挙げられるFW染野唯月（尚志高、鹿島アントラーズ加入内定）はこう話す。

「自分がライバル視している西川選手、若月（大和）選手があれだけ活躍したということは、自分の中で物凄く刺激になっています。自分がもっと頑張らないといけないと、常に思わせてくれるので、2人の活躍は自分にとってもプラスだと思っています」

　染野は西川、若月と同じ高校3年生だ。2002年の早生まれとしてU-17W杯に出場する2人のストライカーが、世界から注目を浴びる存在にまで成長する姿に、強烈な刺激を受けていた。

　さらに同い年の武田も続ける。

「今、現にU-17W杯で自分の同級生やその下の年代があれだけ結果を残しているわけですから、僕らも結果を残さないと話にならないと思っています」

　危機感を募らせている。

　影山監督は今回の選手たちの取り組む姿勢に目を細めている。

「安泰は無い。そりゃそうですよ、だから今回の合宿でもみんながかなり躍起になって『いいプレーを見せなきゃ』、『アピールしなきゃ』という気持ちがヒシヒシと伝わってくるんですよ。だからこそこっちも『一次予選に関しては君たちで行くからな。そのあとは分からないぞ』ということを匂わせながらやっています。満足しないことはいいことですし、重要なことですから」

【次ページ】　共通する「フル代表につなげる」。