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徐々にイングランドを追いつめ……。
南アがNZと並ぶW杯通算優勝3回に。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/11/03 12:00
オールブラックスと並び、W杯通算優勝回数を3回としたスプリングボクス。ジャパンを破った南アは、そのまま世界の頂点に。
均衡する戦況が微妙に変化して……。
1トライとコンバージョンでは追いつかれないスコアとなったが、52分にペナルティゴールを決められて6点差に縮まる。58分にポラードがこの日7本目となるペナルティゴールを成功させ、南アフリカは18対9と9点差に戻す。しかし、2分後にペナルティゴールによって6点差に詰め寄られる。
決定的な差をつけられないまま時間が過ぎていく――。
それでも、フォワードがプレッシャーをかけながらバックスを使う南アフリカの戦略は、フィットネスで優位と見られていたイングランドを消耗させていたのである。
66分だった。左サイドからキックパスを使って突破を図り、日本戦で2トライを決めていたマカゾレ・マピンピがインゴールへすり抜けていく。両チームを通じてこの試合初めてのトライにポラードがコンバージョンゴールを加え、スコアは25対12となる。
世界一の3文字が、ついに輪郭を帯びてきた。
スクラムを中心とした攻防で優位に立つ南アフリカにとって、残り時間でイングランドがどんな攻撃を仕掛けてくるのかは分かりやすい。
スクラムやラインアウトではなくパスを主体としたアタックで前進しようとする相手をしっかりと跳ね返し、ペナルティのアドバンテージからチェスリン・コルベが右サイドから抜け出す。
背番号14がインゴールへ飛び込んだ74分に、'07年大会決勝の再戦は実質的な結末を迎えたと言っていい。
最初に負けたことで思いを強くした南ア。
今大会の南アフリカは、プール戦の初戦でニュージーランドに13対23で敗れていた。
「あの試合はプレッシャーにどう対応するのかの大きなテストだった。負けたことでどうやってプレッシャーをコントロールするのかを学んだ」とエラスムスHCは言う。
準決勝でニュージーランドの3連覇を阻止していたイングランドに比べて、南アフリカは餓えた思いで上回ったのか。