試合前のキャッチボール。

　卒業後、日立製作所に進んだ西澤は、今夏の都市対抗野球北関東2次予選でも活躍。5月30日の全足利クラブ戦では5回を3安打1失点に抑える好投で、同社の本大会出場に貢献した。

　松本と東妻も同様だ。松本は今季、埼玉西武で16試合に登板。ペナントレース後半から先発ローテの一員として7勝を挙げた。東妻も千葉ロッテでセットアッパーとして24試合に投げるなど、辻が思い描いたとおりの活躍を各々が次のステージでも披露した。

　そんな辻が、登板前のピッチャーと欠かさず続けていることがある。

　試合前のキャッチボールだ。

「僕は彼らの普段の練習を見ています。だから試合前のキャッチボールも、必ず先発ピッチャーとすると決めているんです。オープン戦からずっと繰り返していると、調子が悪いときにどう調整するかとか、こういう日はこんな傾向があるとか色んなことが見えてきます。当然、些細な変化にも気づくことができる。それは物凄く大切にしています」

　先発の交代時期も基本100球をめどに判断する。そのときのボールの質や高さ、さらにフォームでどこか違和感が生じてないかをつぶさに観察し、違和感があれば、それ以上無理はさせないで交代する。

古城監督「大切な人としての成長」。

　古城監督も辻の方針に理解を示すようにこう話す。

「学生スポーツにおいては勝つことがゴールではなく、学生たちにはその先がある。大事にしているところは野球よりも、もっと大切な人としての成長です。それが野球に対する取り組みにも当然繋がってくるとも思いますし、野球を通して厳しいことに立ち向かっていくとか、仲間と一緒に乗り越えていくとか、そういったものにも繋がると思うんです」

　前述したとおり、今年も吉田が東京ヤクルトから上位指名を受けた。来年の陣容を見ても、前述の規定投球回数をクリアした最速154km右腕の森を筆頭に、'16年のセンバツで最速146kmを叩き出した吉高壮といったプロ注目の逸材が控えている。今秋のドラフトでは惜しくも指名漏れになった北山も社会人野球を経て、2年後の指名を見据えていくのだろう。

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