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来年もドラフト候補がいる日体大。
辻コーチが築いた投手王国っぷり。
 

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byKyodo News

posted2019/10/30 11:30

来年もドラフト候補がいる日体大。辻コーチが築いた投手王国っぷり。<Number Web> photograph by Kyodo News

ヤクルトにドラフト2位指名を受けた吉田大喜。先輩の松本航(西武)、東妻勇輔(ロッテ)に続く活躍を見せることはできるか。

「同じ土俵にお前も来ているぞ」

 横浜市長杯は1回戦から決勝までの4試合を4日間ぶっ続けで行うトーナメント方式で行われる。この大会、日体大はシード扱いで2回戦からの登場ではあったが、それでも3日間で3試合を投げるとなると、つい主戦投手に頼り、連投もしくは中1日など無理な登板をさせてしまいがちになる。しかし辻は、そのプランを古城隆利監督に進言しなかった。

 主戦の松本、東妻の2人に依存するのではなく、その年の投手陣のまとめ役として働いた西澤にあえて大一番を託す選択をしたのだ。

「お前に期待しているぞという示しですよね。『(松本、東妻と)同じ土俵にお前も来ているぞ』という意味も含めて西澤を先発させました。彼は今、(社会人硬式の)日立製作所にいますけど、僕は彼が社会人に行けるピッチャーだと前々から思っていましたし、ピッチャー陣のリーダーという目でずっと見てきました」

 辻の信頼に応えるようにこの日、西澤は好投した。4回までは緩急を有効に使って、創価大打線を3安打無失点に抑える見事なピッチング。5回にヒットと味方のエラーからピンチを作り、3点を献上したが、きっちりゲームを作って、次のピッチャー(川井智也)にバトンを託し、大役を果たした。

初めてチーム力を感じた大会。

 その結果、日体大は横浜市長杯を優勝。次の明治神宮大会でも万全の投手陣で勝ち上がり、日本一の座を掴んだ。

「4年生たちはみんな『西澤を(横浜市長杯の決勝で)投げさせよう』と合言葉のようにベンチで話していました。3年生の松本も先輩の西澤を決勝で投げさせようと準決勝であれだけ(国際武道大を4安打完封)のピッチングをした。だから当日は当然、『西澤が行くんだろ』という空気にもなっていました。こういうことが大事だと思うんです。チームとして雰囲気がしっかりできた中で、その後の神宮でも優勝ができた。あの時、初めて“チーム力”、チームのまとまりというものを強く感じることができました。僕の思っていることがちゃんと伝わっているんだと。不思議な感覚になりましたね」

【次ページ】 試合前のキャッチボール。

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