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菅原由勢は早くもAZの人気者。
三枚目の弟キャラで心を鷲掴み。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2019/10/30 11:40
菅原由勢の自然体で明るいパーソナリティは、AZですでに認知され、愛されている。
パーソナリティとプレーが直結。
別に海外のチームに溶け込むのに、明るさや社交性が必須条件ということはないだろう。自分のペースできっちり結果を残せば、周囲の人間関係や居場所は自然とついてくる。
だが菅原の場合は、明るいパーソナリティがプレーとも直結しているので、単に明るいというわけではない。
24日のELアスタナ戦。70分から出場し、1得点に加えてPKを獲得するシュートを放ち6-0の勝利に大きく貢献した。
ポジションは本職のサイドバックではなく、4-3-3の右ウィングのポジションだった。交代の際、アルネ・スロット監督からの指示は自分のパーソナリティと直結したプレースタイルを存分に発揮してくれ、というものだった。
「監督からの指示は、アクションを多くしてくれというか、エナジーを持ってやってくれと言われました。僕がプレーすることでチームの士気が上がればいいし、それが僕の良さだと思ってるので。
そこを出しつつ、勝っていたのでしっかり失点ゼロでいくのと、僕自身のアピールとしてゴールを取らなきゃ、と色んな思いがありましたけど、ほんとうに1分1秒集中してできたと思います」
菅原がAZに溶け込めているのは、ただ明るいからではない。だが、プレースタイルはその性格や話した印象を裏切らない、パワフルで味方への献身を厭わないものだ。
横から話しかけてきた“お兄ちゃん”。
ミックスゾーンで話を聞いていると、隣で取材を受けているヨナス・スヴェンソンが話しかけてくる。ちょうど、菅原がそのヨナスの話をしているところだった。会話に「ヨナス」という単語が出て来たのが彼の耳にも届いたのだろう。
「今日のは良いパスだっただろ?」
「もちろんだよ!」
菅原が85分に得点したのは、ヨナスとのワンツーパスを受けてだった。ヨナスのポジションは右SB、本来であれば菅原がプレーしたいポジションだ。
「僕の先生というか、なんでも教えてくれます。優しいですし、居残り練習もいつも一緒にやってくれて。ピッチに立ったら本当にお父さんかのよう。僕が今ここにいるのはヨナス選手のサポートがあるからと感じてて、同じポジションですけど敵対心は一切なくて尊敬が……。
もちろんポジションは奪わなきゃいけないですけど、監督はうまく共存させてくれるので、いいコミュニケーションもとれる、僕の中で素晴らしいお兄ちゃんです」
19歳だから、可能なことなのかもしれない。だけど、ライバルをそんな風に見ることができる菅原はきっと多くを吸収し成長していくことだろう。