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川島永嗣が“オッサン”と敬愛する
自転車界の開拓者、別府史之の15年目。
posted2019/10/27 08:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Sonoko Tanaka
日本を離れ、海外の地でプロ選手として活躍を続けられるのは限られた人だけである。第一線で10年以上となると、なおさらだろう。競技レベルの差を乗り越えることはもちろん、言語など文化の違いに適応することも必要になってくる。
10月のW杯アジア2次予選に招集されたサッカー日本代表を例に取れば、20人もの海外組がいるなかで、ヨーロッパで10シーズン以上にわたってプレーしているのは3人のみだ。
主将の吉田麻也(サウサンプトン)、長友佑都(ガラタサライ)、そしてGK川島永嗣(ストラスブール)。その守護神が同じプロアスリートとしてヨーロッパで親交を深め、親しみを込めて「オッサン」と呼ぶ“海外組の先輩”がいる――。
日本人サイクリストとして、ヨーロッパへの道を切り拓いた先駆者、別府史之である。
海外でのプロ生活は、川島らをしのぐ15年目。現地に深く根を下ろし、フランス人女性と結婚して愛娘もいる。
100年以上の歴史を誇る自転車ロードレースの本場で、36歳を迎えても最前線で走り続けている。プロ選手の平均寿命が約6年とも言われる厳しい世界で、2019年も国際自転車競技連合(UCI)のトップカテゴリーであるワールドチーム「トレック・セガフレード」に所属し、世界の猛者たちとしのぎを削った。
再びサッカーにたとえるなら、UEFAチャンピオンズリーグを戦うビッグクラブでプレーしてきたようなもの。2009年に世界最高峰の自転車ロードレース『ツール・ド・フランス』で日本人初の完走者となった男のモチベーションは、一向に衰えない。
「気持ちを強く持っていないと、すぐに脱落してしまうのがこの世界。自転車と同じで(人生も)ペダルを踏まないと、先には進めない。踏まないと終わってしまうので。辛い状況でも走り続けないと、先は見えてきません」