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川島永嗣が“オッサン”と敬愛する
自転車界の開拓者、別府史之の15年目。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph bySonoko Tanaka
posted2019/10/27 08:00
ロードレースで長年存在感を放つ別府史之。インタビューでその思いのたけを語ってくれた。
3度目&自国開催の五輪への思い。
いまも目はぎらぎらしている。北京五輪、ロンドン五輪に続き、自身3度目となる2020年の五輪には特別な思いを抱く。
「五輪は数あるレースのひとつですが、今回は自国開催ですから。東京五輪には出たい。出たくない理由なんてないですよ。コースに入っている道志村、三国峠は昔、練習でよく走った場所です。僕の選手キャリアは、もう晩年。東京五輪は一つの区切りになる。来年で辞めるわけではないですが、そこで今後の展望を見ていきたいと思っています」
日本の五輪出場枠は2人。自転車競技関係者たちは、ワールドツアーを転戦する別府史之、新城幸也(バーレーン・メリダ)の実力が抜けていると言うものの、今回の代表選考はポイント争いで決まる。2019年1月1日から'20年5月31日までに開催される国内外のレースが対象となる。
現時点で別府は1位の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、2位の新城に大きく水をあけられているが、焦りは全くない。むしろ、自信をのぞかせている。
「来年の5月まであるので。まだひっくり返せますよ。算段は立てています。今年は母親の死もあり、死ぬ前にもっと活躍する姿を見せたいという気持ちから、少し焦っていました。五輪のポイントを取ってやるぞと思い過ぎた。だから、うまく回るものも回らなかったのでしょう。来年はこれまで通り、冷静に気張らずに行きます。そうすれば、自ずと結果は付いてきますから」
アシストとして見せた最高の仕事。
ポイントを取る難しさを知った上でのコメントである。
ロードレースはチーム競技であり、個人競技ではない。所属のトレック・セガフレードでの役割は、エースを勝たせるために自らが犠牲になるアシスト。10月19日、20日に宇都宮で開催されたアジア最高峰のレース『ジャパンカップ』でもアシストとして懸命に働き、自らのポイントは取っていない。それでも、クリテリウムでエドワード・トゥーンス、ロードレースではバウケ・モレマと、トレック・セガフレードが連勝を果たした大会後は清々しかった。
「チームが2冠を達成でき、そのために働けたことが何よりも良かった。最高の結果ですよ」
勝負はまだ先。ポイントを狙える場面は、必ずあるという。これまでのキャリアも目標から逆算して結果を残し、チャンスを手繰り寄せてきた。逆境にはめっぽう強い。ヨーロッパでプロ契約を勝ち取るまでもそうだった――。