プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「出し切って動けなくなる覚悟で」
菅野智之はグッドルーザーだった。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/10/24 12:00
腰の故障を抱えながら、マウンドに上がった菅野。6回3分の1を投げて6安打8奪三振、自責点3と先発の責任を果たした。
原監督の言葉に涙を浮かべた瞬間から──。
もちろん最大の宿題は目の前にして手が届かなかった日本一を手にすることであり、そのためにはどうしてもソフトバンクを破ることだろう。
9月にシャットダウンを決めていた菅野の心に火をつけたのは、チームの監督であり、伯父でもある巨人・原辰徳監督だった。
リーグ優勝を決めた記者会見。シーズン終盤にチームの力になれなかったことに「なにひとつ貢献できていない」と悔やむ菅野の言葉を遮ったのは原監督だった。
「そんなことはありません。自分からもうダメだと1度も言わなかった。これからまだまだ大きな仕事をやってくれると思います」
監督のその言葉に声を詰まらせ、涙を浮かべた瞬間から、菅野のこの日のマウンドへの挑戦がリスタートしたといっても過言ではない。
「よく投げた。思った以上のね。非常に気持ちも体も投球も良かったと思います」
原監督がこう語るように巨人にはエース・菅野がいる。
巨人の2020年の逆襲の原点はまずそこだとすれば、故障を癒して、万全のコンディションを取り戻すことが、菅野の来季への最大のミッションである。