プロ野球亭日乗BACK NUMBER
全てナックルカーブや内角の“残像”。
巨人に3連勝、ホークスの特殊配球。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/23 12:00
4回を投げて亀井のソロ本塁打による2失点に抑えたバンデンハーク。
強烈に内角への残像を植え付ける。
第1戦の第1打席で千賀が坂本に投げた6球の内、5球が坂本の得意とするインコースに配された。初球の158km、2球目の154kmの内角ストレートをファウルで追い込むと、3球目もインコース低めに真っ直ぐを投げてこれがボール。4球目はこの打席で唯一、外角に行った真っ直ぐだったがこれも坂本がファウルして、5球目は再びインコースにフォークを落としたが、これは坂本が見切ってカウントは2ボール2ストライク。そこからインコース高めの156kmをつまらせて二塁へのフライに打ち取った。
この打席で強烈に内角への残像を植え付けることが、ソフトバンクバッテリーの最大の狙いだった。
内角打ちが得意で、普段は内角を意識しないでも甘い球がくれば反応で仕留められる坂本に、あえて内角を意識させる。そうすることでどういう効果が生まれるのか。
明らかにボールの釣り球に……。
1つはその残像が残るので外のボールが遠くなる。
そして2つ目は今まで無意識にバットが出ていたインコースのボールにも意識が生まれることで違う反応に変化する。
第3戦で喫した3つの三振は1つ目がバンデンハークの外角に流れるスライダーに泳いで空振りしたもので、2つ目は粘った末に低めに落ちるナックルカーブにタイミングを狂わされて空振りした。
そして3つ目は2ボール2ストライクから2番手右腕の石川柊太投手の150kmのインハイの真っ直ぐを空振りしたものだった。
シーズン中の調子の良い時の坂本なら、決して手が出ないような明らかにボールの釣り球だった。しかし内角への意識が強いからこそ、その釣り球に手が出てしまった。意識しないで打てる打者に意識させるだけで十分だった。そこに坂本のこのシリーズでの崩されっぷりが如実に出た。