フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
GP初戦「最後のお別れのつもりで」。
弟の死に手向けたメッシングの滑り。
posted2019/10/23 16:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Christian Petersen-ISU/Getty Images
ラスベガスで開催されたGP大会第1戦、スケートアメリカ。半年ぶりに本格的なシーズン開幕になり、どの選手もそれぞれの物語を抱えて大会に挑んだ。
男子は大方の予想通り、ネイサン・チェンが優勝して3年連続のタイトルを手にした。
チェンはSP『ラ・ボエム』で、4ルッツ、3アクセル、そして4+3トウループを難なく降りて、102.71を獲得した。翌日のフリーは、ジャパンオープンでもお披露目した『ロケットマン』。出だしを3ルッツ+3トウループの構成にして、4フリップ、4トウループ、4サルコウと2度の3アクセルを降りた。
唯一のミスは後半に予定していた4トウループが2回転になったこと。後半のヒップホップの振付の部分では観客を沸かせた。フリー196.38、総合299.09で、特にシーズン初めとしては驚くほどの完成度である。
「今日の演技には満足しています。GP初試合で、正式な試合の形態としては世界選手権以来初めて、SPとフリーを滑りました。スコアにも満足しているけれど、まだ進歩の余地はあると思う。スタート地点としては、良かったと思います」
イェール大学でキャンパスライフをおくる。
会見でそう述べたチェンは、昨シーズンはイェール大学で寮生活をおくりながら、自主トレを続けてきた。夏休みの間は、カリフォルニアに戻ってトレーニングをしていたという。
「そのおかげで、また成長することができたと思う。時間を大事に使って、ラファエル(・アルトゥニアン)がいなくても自分でトレーニングを続けていける基盤をしっかり作りました。コーチにとってもすごく大変なことだったと思うけど、ぼくの成長を助けるために時間をとってもらって感謝しています」
現在はまたイェール大学に戻って、2年目のキャンパスライフをおくっている。
「1年生のときよりも、授業はかなり難しくなっていて、それだけ時間を費やさなくてはならなくなりました」というチェン。そう言いながらも、これだけの安定感を保っているのは驚異的なことである。