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GP初戦「最後のお別れのつもりで」。
弟の死に手向けたメッシングの滑り。
 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byChristian Petersen-ISU/Getty Images

posted2019/10/23 16:00

GP初戦「最後のお別れのつもりで」。弟の死に手向けたメッシングの滑り。<Number Web> photograph by Christian Petersen-ISU/Getty Images

9月22日に弟を亡くしたばかりのキーガン・メッシングだったが、しっかりと滑りきり、総合4位の成績だった。

心をうつブラウンの「シンドラーのリスト」。

 2位に入ったのは、同じくアメリカのジェイソン・ブラウンだった。

 総合255.09と、チェンと40ポイント以上の点差がついたのは、ブラウンのプログラムには4回転が含まれていないためだ。

 今回出場した12人の男子の中で、最初からプログラムに4回転を入れていないのはブラウンと12位に終わったロマン・サヴォシンだけである。

 それでもブラウンが、4回転を跳んだ他の男子を抑えて2位に入ったのは、ひとつひとつの技の質が高いことと、彼のパフォーマンスの質の高さのためだ。音楽にぴたりと合うというより、彼の動きのひとつひとつが音楽を奏でているかのようである。

 特にフリーの『シンドラーのリスト』は、見ている観客の心をうつ素晴らしい作品だった。

8月に交通事故で脳震盪をおこした。

「この『シンドラーのリスト』は、以前から滑ってみたいと温めていた曲。試合で滑るのはここが初めてでした」

 そうコメントしたブラウンは、8月に交通事故で脳震盪をおこした後遺症のため、9月に予定していたネーベルホルン杯を欠場した。

 この大会の2週間前まで、スピンの練習ができなかったのだという。

「少し不安はあったけれど、SPを滑った後で体が競技モードに戻った気がしました」

 4回転について聞かれると、「練習ではかなり良くなってきている。でも試合に入れるというのは、また別物なので」というブラウンだが、表現力があるから4回転はいらない、というようには決して考えていないという。

「少しずつ、(試合で成功させる日が)近づいています」ときっぱり答えた。

【次ページ】 人々の涙を誘ったキーガン・メッシング。

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