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大坂なおみと新世代女王候補が激突!
賞金大幅増のWTAファイナルズ展望。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAP/AFLO
posted2019/10/25 11:00
中国オープンで初対戦した大坂なおみ(左)とアンドレスク。WTAファイナルズの舞台でも熱戦を期待したい。
「成長を証明できるように」
北京で優勝した大坂は、こう語っている。
「自分の力を証明してみせなくてはいけないって躍起になってきたけど、その考え方は間違っていた。自分の今の力は自分が一番よくわかっている。毎日毎日、少しでも成長していることを自分自身に証明できるようにがんばるしかない」
そんな大坂には、新星の輝きを放っていた1年前とは別の期待感を抱かずにいられない。
さて、そのWTAファイナルズだが、過去5年間に渡って開催していたシンガポールから中国の深センに舞台を移しての初開催となる。新開催地決定とともに、話題をさらったのがその莫大な賞金だった。
ATPファイナルズ優勝賞金の1.8倍。
総額でいうと、昨年の700万ドルから1400万ドルへと倍増。優勝者にはラウンドロビン無敗だった場合ボーナスが加わって472万5000ドル(約5億1400万円)が与えられる。
グランドスラムの中でも最高賞金を誇る全米オープンの優勝賞金が385万ドル(約4億1800万円)で、それを1億円も超えたことは驚きだったが、よりショッキングだったのは、男子のツアー最終戦であるATPファイナルズの優勝賞金の1.8倍にもなるということだ。
男女の賞金の完全同額化を悲願とし、長年その不平等と戦った女子テニスだが、同額どころか男子をはるかに上回るというスポーツ界における歴史的な出来事である。昨年1月、全豪オープンが開催されていたメルボルンのナショナルテニスセンターで概要が発表されたが、そのときの現場のざわつきはすぐに世界中に発信された。
賞金の高騰こそが繁栄の証とされてきたが、このときばかりは戦慄さえ覚えた者も少なくなかったはずだ。
男子のトッププレーヤーもコメントを求められ、たとえばノバク・ジョコビッチは「WTAの努力の成果に、おめでとうと言いたい。選手たちはそれに値する」と言ったが、この<成功>によって、女子テニスを、WTAファイナルズを見る世界の人々の目は確実に厳しくなる。
そのレベルは果たして男子の2倍近い賞金を得るにふさわしいのかということが、間違いなく議論になるだろう。