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田中史朗「僕は何も言う必要はない」
ジョセフ体制が成熟した何よりの証。 

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多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/10/21 15:30

田中史朗「僕は何も言う必要はない」ジョセフ体制が成熟した何よりの証。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

南アフリカ戦後、リーチ主将の掛け声のもと、全員で写真に収まったジェイミー・ジャパン。「ONE TEAM」を象徴するようなシーンだった。

先陣を切り、軋轢も恐れず。

 勇敢に先陣を切ってきたパイオニアだ。

 2012年に南半球最高峰のスーパーラグビーに挑戦し、日本代表のジェイミー・ジョセフHCが当時率いていたハイランダーズに所属。レベルズに参加した堀江翔太と共に日本代表初のスーパーラグビー選手となり、2015年にはリーグ優勝を経験した。

 必要とあれば軋轢も恐れずに発言する。同年行われたイングランド大会では、期間中のミーティングで田中らしい言動があった。

 2015年9月28日、イングランド中央部のウォリックに滞在していた前日本代表「エディー・ジャパン」は、1勝1敗で迎えるサモア戦へ向けたミーティングを行っていた

 現代表もスローガン「ONE TEAM」のもと、一体感を醸成する取り組みを行っているが、エディー・ジャパンにはジグゾーパズルを使った儀式があった。

 全員が一つずつ持っているピースを心構えができた選手から埋めていき、最後にリーチ主将がピースを埋めると、中央に当時のスローガン「JAPAN WAY」と書かれたパズルが完成する――。

4年前とは変わった田中の役回り。

 椅子に整列したメンバーの前に立ったリーチ主将が、そんなジグゾーパズルの説明を終えた直後だった。前指揮官のエディー・ジョーンズが口を開く前に、集団の中にいた田中史朗が「ちょっといいですか」と口を開いた。

「(ジグゾーパズルの取り組みは)俺らがひとつになるためにやっているから。自分が(ピースを)持っておくということに、誇りを持ってほしい。最後にリーチがはめた時点でジャパンウェイが完成するという想いをもってやってください」

 前回大会で、田中はチームに活を入れる役回りをしなければならなかった。

 しかしジェイミー・ジョセフHCが指揮官になり自主性が芽生えると、チーム内で頻繁に自主ミーティングが行われるようになり、多くのリーダーが育った。すると田中はあっさりと身を引く。理由は単純明快だった。

「リーダーも育っていますし、コミュニケーションも多いので、僕は何も言う必要はありません」

【次ページ】 「家族のようなチーム」

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