スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
久保建英はレアルに爪痕を残せるか。
初真剣勝負、ボールさえ渡れば……。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2019/10/19 11:30
アトレティコ・マドリー戦ではポスト直撃のシュートを放った久保建英。公式戦初ゴールがレアル相手なら、これほどまでに分かりやすいアピールはない。
アトレティコ相手に惜しい一撃。
その3日後、ミッドウィークに行われた第6節アトレティコ・マドリー戦では右MFで初先発のチャンスを得た。試合は0-2で敗れたが、久保は初のフル出場。後半2分には味方とのパス交換を繰り返しながらゴール前右に侵入し、右足シュートがゴールポストを叩くマジョルカ最大のチャンスを作り出した。
良い形でボールが渡れば、何かやってくれる。3試合連続でゴールを予感させるプレーを随所に見せた久保だが、その後の2試合は見せ場を作れずに終わった。
第7節アラベス戦では2戦連続でフル出場を果たしたが、この日は連戦の疲労もあってか、全体的に動きが重かったチームと同様に精彩を欠いた。
19位対18位の降格圏対決となった第8節エスパニョール戦では開幕戦以来となる今季2勝目を手にしたが、久保は3戦ぶりにベンチスタート。この日は初めて左MFで途中出場したが、ほとんどチャンスに絡めぬまま試合を終えている。
出場6試合で1アシスト、1PK獲得。それ自体は悪くない結果ながら、いずれのプレーもチームの勝利には結びつかなかった。その間のチームの成績は1勝1分4敗。個人としてもチームとしても、満足できる結果とは言えないはずだ。
マジョルカが久保を生かせていない。
久保の突破力やパスの精度はチーム内でも頭1つ抜けたレベルにある。しかしこれまでの試合を見る限り、チームとして十分に彼の能力を生かすことができていない。
ゲームメーカーのサルバ・セビージャが左のインサイドハーフ、昨季のチーム得点王ラゴ・ジュニオルが左MFに位置することもあり、マジョルカの攻撃は多くの場合、左サイドから組み立てられる。
そのため右サイドにボールが渡る回数が極端に少ないことが久保を孤立させる一因となっているのだが、これは右サイドに誰を起用した際も見て取れるチーム全体のプレー傾向である。
注意すべきはこの傾向自体が悪いものではなく、むしろ左サイドからの組み立てがマジョルカの攻撃のベースとなっていることだ。
ならばその中でより久保を生かすにはどうすべきか。そう考えると、まだ実戦では試されていない4-4-1-1のトップ下、もしくは4-1-4-1の右インサイドハーフ起用が1つの解決策になるかもしれない。