球体とリズムBACK NUMBER
オールブラックスも注目の快進撃。
ジャパンを英国紙はどう伝えた?
posted2019/10/11 11:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Naoya Sanuki
「ジャパンはどこまで行けると思う?」
日本がアイルランドを下してから、こうした質問がラグビー列強国の選手や監督に向けられている。もはやルーティンのように。
そう書いたのは、英国主要紙のひとつ『ガーディアン』のポール・リース記者だ。その記事によると、ニュージーランドのフランカー、サム・ケインは慎重に言葉を選びながら、こう返答したという。
「スコットランド戦で彼らがどう戦うのかが楽しみだね」
4年前の南アフリカ戦の勝利はラグビー史上最大の番狂わせと言われ、『ブライトン・ミラクル』と題した映画までつくられた(今大会開幕前日に公開)。それと同等かそれ以上の激震をもたらしたのが、2019年9月28日にアイルランドから収めた白星だった。
“静岡の衝撃”と名付けられた。
なにしろ相手は、今大会開幕時に世界ランキングで1位だった優勝候補である。開催国のアドバンテージがあるとはいえ、前大会開幕時にW杯で1勝しか挙げていなかった日本が勝つとは、ほとんど誰も予想していなかった。4年前の“奇跡”に次ぐ大番狂わせは、“静岡の衝撃”と名付けられている。
その“衝撃”の一戦について、同じくリース記者はこんな書き出しでレポートした。
「ジャパンがまたやってのけた。今回は、2週間前まで世界ランキングで1位だったチームを相手に。このW杯のホスト国代表は、スピードとスキル、情熱によって、9点のビハインドを跳ね返して勝利を収めた。それらは湿度や時間(の経過)にも、弱まることはなかった」
そして欧州の記者らしく試合の背景や地理にも触れ、「終了の笛が鳴った時に轟いた咆哮は、近くの富士山さえも震わせただろう」と続けた。