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オールブラックスの「静」と「動」。
ラグビーの本質を捉えた決定的瞬間。
posted2019/10/12 12:00
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
David Rogers/Getty Images
合計40試合で争われるプール戦もいよいよ大詰めを迎え、ベスト8進出をかけた各国にとっての最終戦を迎えるラグビーワールドカップ。ニュージーランド、南アフリカ、イングランド、ウェールズといった優勝候補は順当に勝ち星を積み重ね、すでに決勝トーナメント進出を決めている。
取材を続ける海外メディアのジャーナリストやフォトグラファーは、これら強豪国の激闘をどのようにとらえたのだろうか?
NumberWebでは大会期間中、世界的なフォトエージェンシーであるGetty Images(ゲッティイメージズ)が撮影した膨大な写真の中から、カメラマンがセレクトした作品を紹介。試合をもっとも近くで見ているフォトグラファーが心を動かされた瞬間や、テレビ画面からは伝わらない大会の盛り上がりを伝えていく。
短期集中連載第2回目のカメラマンは、Getty Imagesのクライブ・ローズ氏。夏冬のオリンピックを6大会撮影しているほか、キャリアの皮切りともなったF1など幅広いジャンルをカバー。特に水中撮影とスキーなど山岳競技の撮影を得意としている。大会3連覇を狙うオールブラックスに焦点をあて、ローズ氏の選んだ写真とコメントをお送りする。
倒れこみながら伸ばした左手。
10月6日 東京スタジアム
プールB/ニュージーランドvs.ナミビア
ナミビアを相手にニュージーランドは圧勝したが、特にこのトライはずば抜けていた。世界最高峰のトライだ。
この写真の前のシーンも注目すべきだ。オールブラックスがピッチ中央から左サイドへ細かくパスを回し、ボールをもらったスクラムハーフのTJ・ペレナラ(通称「TJ」)が前へ前へと走り出す。TJは一連のプレーの中で一度タックルをされ転んでいたのだが、即座に立ち上がり、仲間が繋いだボールをもう一度抱えて走り出した。彼を止めようとナミビアの選手2人がタックルをするも、最後は倒れ込むギリギリのタイミングで、ボールを持った左手を伸ばした。このデイビッド・ロジャーズの写真はその瞬間を捉えたものだ。
決死のチャレンジによりトライ成功。これはこの試合で11本目のトライとなった。味方の華麗なるパス回しの残像と、最後までゴール一直線に走り抜けた“TJ”の迫力が伝わってくる圧巻の1枚だ。