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ガンバの有望株を日本語で励ます、
アデミウソンは天才肌かつエエ奴。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGAMBA OSAKA
posted2019/10/10 11:40
世代別ブラジル代表にも名を連ねたアデミウソン。宇佐美貴史らとの連係でガンバらしい攻撃力をもっと見せてほしい。
ガンバの名誉のために放った一撃。
組織的なセレッソ大阪の守備を個で崩そうとアデミウソンは奮闘。後半アディショナルタイムには相手GKキム・ジンヒョンのオウンゴールを誘発するシュート気味のキックで、完封負けからチームを救って見せたのだ。
「あの状況で、チームが諦める姿勢を見せると3点、4点という失点につながったと思う。1点取れたのは大きいし、最後まで諦めなかった姿勢は今後につながる」
ブラジルでは大量失点の試合で、かろうじて返した1点を「ゴウ・デ・オンハ(名誉のゴール)」と称するが、絶望的な試合展開で、背番号9はガンバ大阪の名誉のために、ピッチを駆けていた。
2年目の福田に日本語で話したこと。
サンパウロではレギュラーに定着しきれず、U-21ブラジル代表以来、カナリアイエローのユニフォームにも縁がないアデミウソン。しかし、王国屈指の名門で過ごした経験は、今の立ち振る舞いにも活きている。
エゴとは無縁の助っ人は、世代交代が進みつつあるガンバ大阪において良き兄貴分としての存在感も見せはじめているのだ。
5月の大阪ダービーでは1-0でガンバ大阪が勝利したが、終了間際のことだった。先発に抜擢された福田湧矢がドリブルで切れ込むと、中央でフリーのアデミウソンへのパスを選択せず、放ったシュートはGKがあっさりキャッチ。アデミウソンはその瞬間こそ怒りを露わにしたが、試合後にはプロ2年目の福田を日本語とジェスチャーを交え、こういたわったという。
「大丈夫。私も若い時はそうだった」
他ならぬ福田も証言する。
「アデ(ミウソン)はむっちゃ、優しかったですよ」
アデミウソンがサンパウロでトップデビューした当時のチームメイトはクラブのレジェンド、ロジェリオ・セニやルッシオ、カカーら世界王者に輝いたブラジル代表が数多く存在した。
「セレソンの経験者から僕は色々なことを学んだんだ。ピッチではそういう選手のサポートに心強さを感じたし、僕がボールを持った時、彼らが『前を向いて仕掛けろ』『自分のプレーをしていいよ』と声をかけてくれたことが、今の自分につながっている。ガンバではそういうことも今の僕の立場でやれたらいい」