ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
日本ハム広報が見届けた戦力外通告。
力強い握手、笑顔、涙する選手も。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2019/10/03 19:00
2014年ドラフト6位で入団した立田将太投手(後列左から2番目)。チームメートへの思いを触れた際、涙を流した。
入団5年目、23歳が流した涙。
そんな中でも一瞬だけ、人間らしさが覗いた部分があった。
立田将太投手。
高卒で入団5年目。23歳の若さで今回、岐路に立った。高校時代から周りに流されることなくレベル、スキルアップをして、ファイターズへと入団した。高校時代に、プロで活躍することを第一義に目標設定し、故障防止の観点などから球数を自身で制限。異色の道のりで、プロの世界へと歩んできた。
ファイターズでは、その夢は叶わなかった。今後は現役続行を希望していると表明したので、再チャレンジする機会が訪れるのを待つことになる。そんな強い意志を持つ立田投手が、ふと23歳の青年らしく、喜怒哀楽を見せた場面があった。
理路整然と報道陣に対応をしている中で、チームメートへの思いを語り始めた時だった。
少し上を見上げた。言葉が、続かなくなった。そして沈黙した。仲間たちと野球ができたことへの感謝の思いを明かし始めた時だった。声は震えていた。言葉にならなくなった。一粒、また一粒と涙が、ほおをつたっていた。おもんぱかった報道陣の配慮もあり、そこで取材は打ち切りになった。
追い込まれた時の所作――。
中村勝投手はマウンド同様、ほぼ表情を変えることなく、クールそのものだった。再挑戦へ向け、スイッチが入っているように見えた。握手して握り返してきた両手は、力強かった。
田中豊樹投手と森山恵佑外野手、岸里亮佑外野手の3選手とは笑みも交えながら、区切りの挨拶をした。
立田投手は、はっきりと現役への強いこだわりを明かしていた。
若者たちばかりだが、追い込まれた時に見せる、それぞれの所作。
プロ野球選手の人間としての強さを目の当たりにする、特別な1日である。