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MGCは日本マラソン最高の名勝負に。
瀬古利彦「設楽くんのおかげです」。
posted2019/09/28 11:30
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
Nanae Suzuki
「設楽くんのおかげだよ」
9月15日のマラソン・グランド・チャンピオンシップ(MGC)。沿道には主催者発表で52万5000人の観客がつめかけ、男子のレースを中継したTBSの平均視聴率は16.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、女子のNHKは13.5%(同)となるなど、五輪切符のかかった選考レースは大きな盛り上がりを見せた。
レース後、日本陸連の一員として記者会見を終えた瀬古利彦・日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーも、満足感の滲む表情で記者の囲み取材に応じた。
報道陣からコメントを求められたのは、MGC3位で五輪出場内定が持ち越しとなり、重大な決断を迫られる大迫傑(ナイキ)に対してだ。
「本人は残念でしょうけど、負けは負けですから。レース前から優勝候補と言われるなかで、(細かいしかけに)対応しすぎていたからね。先頭には逃げた設楽(悠太)くんがいるし、自分からはしかけられもないし。集団の中で対応しすぎた分だけ最後にやられたね。その点で一番力を温存していたのが中村(匠吾)くんですよね」
大迫はファイナルチャレンジに出るべきか。
そして自然と記者の質問は「今後」に向けられた。大迫は、最後の1枠を争う「ファイナルチャレンジ」の3レース(福岡国際、東京、びわ湖毎日)へ出場するべきか、他の選手が自身の持つ日本記録を1秒上回る2時間5分49秒という派遣設定記録を破ることはいないと判断して待つべきか。
「ファイナルチャレンジは設楽くんも井上(大仁)くんも6分台の記録を持っているし、十分日本記録を狙えますよ。だから大迫くんも油断できない。ただし、大迫くんはレースの回数をこなすタイプではなく、集中して走るタイプ。僕がそんなことを言う立場じゃないのだけど、もしコーチだったら(ファイナルチャレンジには出場せずに)『待て』と言いたいですね。
僕が選手で彼の立場だったら、やはりタイプ的に似ているのでやっぱり待ちますね。東京五輪に出場するだけでなく、そこで世界と闘いたいのなら待つべきかな、と」