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耳を疑った武田翔太の中継ぎ起用。
工藤采配に選手への「愛」はあるか? 

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2019/09/25 20:00

耳を疑った武田翔太の中継ぎ起用。工藤采配に選手への「愛」はあるか?<Number Web> photograph by Kyodo News

波紋を呼んだ武田の登板があった21日は、レギュラーシーズンの本拠地最終戦。試合後、場内を一周する工藤監督の表情も冴えない。

二保旭が呼ばれ、先発のマウンドに。

 18日にはバックアップ要員として二保旭が招集された。武田も調整は続けていたが、大方の予想は、この時点ですでに二保が代役を務めるというものだった。

 二保は今季8度目の先発だった。勝ち星は1つだけだが、ゲームメイクの能力には長けており、今季は好投も見せていた。勝ち投手になった7月5日のバファローズ戦は6回1失点。同16日のファイターズ戦も6回1自責点(2失点)とクオリティ・スタートを決めていた。

 その後、慣れない先発での疲れか相手チームの研究力のせいか、やや打ち込まれる試合が増えていたためにファーム調整となっていた。

 そして21日の先発マウンドには二保が上がった。二保は1カ月超ぶりの登板で、強烈なプレッシャーのかかるマウンドで懸命に右腕を振った。結果は4回途中3失点で負け投手になった。

 持ち味のボールを動かす投球でゴロを打たせたが、緩い打球がタイムリー内野安打になるなど不運に泣かされた。決して自滅したわけではなかった。

 その後、冒頭のシーンとなるのである。

武田「完全な状態でないことは確かです」

 肘が悪いから先発回避したのではなかったのか……?

 武田は最初の打者の3番・近藤健介に対して146キロの直球でストライクを奪い、得意のカーブでセカンドゴロに打ち取った。続く4番・中田翔の初球には150キロをマーク。

 この回を三者凡退に仕留めると、続くイニングも打者3人で片づけた。2回を25球で投げきるパーフェクトリリーフだ。

 結局、その後バトンを引き継いだ投手が打たれて1-8の完敗。試合後の工藤監督に武田について問うてみると、「中継ぎの経験もあるし、長いイニングを投げるのは難しかった。コーチからも2イニングならば行けると聞いていたので、中(リリーフ)に入って投げてもらった」との回答が返ってきた。

 倉野信次投手コーチもやはり「長い回を投げるのは難しかった」との判断による起用だったと話した。

 そして、武田はこう振り返った。

「完全な状態でないことは確かです。でも、チーム状況的にそんなことは言っていられない。出来る範囲の中になるけど戦力になりたい」

【次ページ】 プロ野球選手に次の保障などない。

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