伊澤もスランプを経験した。

　だから、期待がいまの丸山に対して過剰にならないよう、先を長い目で見据えるように投げかけた。

「そういった意味ではもうちょっと時間をおいて、戻ってくる時が来ればいいんじゃないかな。1年後、2年後……もしかしたら違う形になって、優勝する可能性だってある。あとは本人がどうモチベーションを上げていくかでしょう」

　かくいう伊澤も、40代のほとんどをスランプといえる状態で過ごしてきた。精神的にも疲弊し、まったくツアーに出場しなかった時期も3年あった。

　そんな苦難を経て復帰した数年前から、レギュラーツアーの会場ではキャディバッグをひとり担ぎ、それこそ予選落ちした週末も練習場で打ち込む姿が見られるようになった。シニア入りして2年目の最近は、スイングにも熱が戻り、ようやく初勝利への体勢が整い始めたところ。

「一応ね。タイヤが1つ外れた軽自動車くらいの勢いで、“ウイン、ウイン”言わせながら上がって、一応、頂上に来たかな」

　ときに空回りする車輪を、回して、休めて、また回し始めたからこそ、また戦えるところまで走ってきた。

「そう、そういうこと。挫折すること、何百回。それで今、ようやく笑ってられるかなって。……いやいや、（試合で）勝ってからじゃないとね。まだ笑ってもいられないね」

　厳しい道のりになるはずの復帰ロードに、丸山が乗るかは今はまだ分からない。

　ただその先で、いつまでも待っていてくれる人はいる。

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