ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
待望のシニアデビュー戦は66位タイ。
苦しむ丸山茂樹に盟友たちがエール。
posted2019/09/24 18:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
「どうでした、きょうの感じは?」
丸山茂樹の目の前に、ヘッドカバーをかぶせたドライバーがにゅっと差し出された。
インタビューのマイクよろしくクラブを握っていた声の主は、後方で報道陣に紛れていた伊澤利光だった。
「……近い、近いから!」
“マイク”を振り払うかのごとく、丸山は唾を飛ばして言い返す。ニヤニヤしたままその場から退散した伊澤の背中を苦笑いしながら目をやった。9月、石川・小松CCでのシニアツアー、コマツオープン2日目。どちらもプレーを終えたあとのクラブハウスでのひと幕。
ひょっとしたらその週、傷ついた心をわずかでも和ませた、数少ない瞬間だったかもしれない。
シニアデビューに色めき立つファン。
残暑が厳しい秋の入り口。丸山が競技ゴルフの表舞台に帰ってきた。50歳以上の男子選手が集うシニアツアー。誕生日の9月12日が、ちょうど大会の初日に重なりさっそくエントリーした。
日本のレギュラーツアーで10勝、そしてPGAツアー3勝という、桁違いの実績を持つルーキー。近年は左手親指の故障から解説者などの仕事がメーンになっていたとはいえ、周辺は若きレジェンドのデビューに色めきだった。
そう期待が膨らんでいたからこそ、丸山のシニア初戦は控え目に言っても屈辱にまみれたものになった。予選落ちのない3日間大会で出場72人のうち66位タイ。初日と最終日はオーバーパーで、通算7オーバーは優勝を争うプレーオフに進んだ2人とは21打の差があった。