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待望のシニアデビュー戦は66位タイ。
苦しむ丸山茂樹に盟友たちがエール。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2019/09/24 18:00

待望のシニアデビュー戦は66位タイ。苦しむ丸山茂樹に盟友たちがエール。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

シニアデビューを果たした丸山茂樹。3年ぶりの競技復帰となったコマツオープンでは72人のうち66位タイに終わった。

自らイップスと語るティショット。

 結果はもとより、プレー内容が影をいっそう濃くした。

 怪我の影響で、ここ5年以上はトップフォームからはほど遠い。再起を図って'17年に手術に踏み切り、患部に負担をかけないクラブの握り方に挑戦した。右手小指と左手人差し指を重ねたり、絡めたりしないベースボールグリップ。そもそも「グリップはスイングの基本」と言われるものだから、とてつもなく大きな変化である。

 それを会得しつつあり、プレーに支障を及ぼす痛みはもうないという。

 問題は自らイップスと語るティショット。スタート前に手なずけたはずのドライバーが、試合になると途端に暴れだす。右へ左へ、散るボール。高さも十分ではない。

軽快なトークもどこか物悲しく……。

 シニアの人気のひとつに、プレー中の選手から漏れる声やパフォーマンスの楽しさがある。かつてのトッププロたちは、レギュラー時代の緊張感から少し解放されたかのようにどこか鄙びた趣を醸す。肉体的な衰えを自虐的な笑いに変えるうちにギャラリーとの距離が縮まり、和気あいあいとした雰囲気になる。

 テレビでもお馴染み、マルちゃんの軽快なトークはその魅力に見事にマッチしたものだが、それもどこか物悲しかった。ミスショットにガッカリする声を上げたファンを「いやいや、今のは“まあまあ”だから!」と自ら制して笑いを呼ぶ。「OBじゃなければイイところです!」。トラブルを免れ、「危ない、危ない。いまのは危なかったぞ」と冷や汗をかき、ドライバーから思わず手を放して「きのうの5ウッドのほうが飛んでるってんだよ」と嘆く。

「ひとりごとが多くなります。まあ、ひとりごとは(尾崎)直道さんが一番多いんだけど」

 こんなやり取りがメディアを通じたものではなく、試合中にロープの外に向けられるのだから、現地のファンにはたまらないのだが……。

【次ページ】 トンネルの中にいる「世界の丸山」。

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