ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
五輪ゴルフコースを管理する仕事。
ぺブルビーチの衝撃が人生を変えた。
posted2019/09/27 11:40
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
「まだ1年」なのか、それとも「もう1年」なのか。それでもオリンピックはやってくる。
2020年の東京五輪は7月24日、新国立競技場で開会式を行う。それに先立ち2日前にはソフトボールとサッカーが始まり、8月9日の閉会式まできっとひと息の間に過ぎていく。
前回のリオデジャネイロ五輪で112年ぶりに正式種目に復活したゴルフは、7月30日から男子が、翌週8月5日から女子がそれぞれ4日間72ホールの個人戦を行う。60人ずつの代表選手たちがメダルを争う舞台は、埼玉県川越市にある霞ヶ関カンツリー倶楽部。1957年、日本チームが優勝し、ゴルフを大衆にひろめるきっかけとなったカナダカップ(現在のワールドカップ)が開催されたコースでもある。
振り返ればここ数年、霞ヶ関CCの周囲は騒がしかった。
2016年春にかけて、実際の五輪会場となる東コース(霞ヶ関CCは東・西コース合わせて36ホールを持つ)の全面改修を行った。その年の末には女性の正会員を当時、認めていなかったことへの改善を各方面から促され、'17年11月には松山英樹を招き、安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領の“ゴルフ外交”の場になった。
五輪コースにやってきたグリーンキーパー。
ゴルフ界の外側からも注がれた視線がようやく分散し、喧騒が少し収まった頃。この日本初の五輪コースは、人知れず大きな変革に乗り出していた。
グリーンキーパーという職業がある。
広大なゴルフ場の芝や樹木、池やバンカーといった敷地内すべての自然条件を管理し、ゴルファーを陰で支えるスタッフ。彼ら、彼女らがいなければゴルフは成り立たない。フェアウェイ、ラフ、グリーン……とあらゆる芝を指定の長さに刈りそろえ、選手に可能な限りフェアな条件を提供してはじめて“競技”と言える。コンディション次第で、選手のプレーぶりも、スコアも、あるいは名誉や賞金の行方も変わるから重要な任務だ。
霞ヶ関CCは五輪を約2年後に控えた昨年秋、その仕事人たちのトップに新しい人物を据えた。東海林護(しょうじ・まもる)さん、43歳がその人だ。