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『P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー』
バカバカしい笑いに溢れた、
ゴルフが織り成す恋愛模様。 

text by

佐藤多佳子

佐藤多佳子Takako Sato

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posted2019/07/24 07:30

『P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー』バカバカしい笑いに溢れた、ゴルフが織り成す恋愛模様。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー』P・G・ウッドハウス著 岩永正勝・坂梨健史郎訳 集英社インターナショナル 1400円+税

 私は、P・G・ウッドハウスを愛してやまない。世界的なユーモア作家で、一世紀を経ても、ザ・英国!という、洒落が効いて超バカバカしい笑いのセンスが、他の追随を許さない。有名なのは執事ジーヴズのシリーズだが、ゴルフ物も多くの短編があり、本当に楽しい。

 男女の恋愛に、バカげた障害があり、あきれるような展開で成就する、あるいは絶対的に望まない相手からほうほうのていで逃れる――というのが、長編短編を問わず、ウッドハウスの物語だ。本書では、天才執事ではなく、ゴルフが恋の行方をさまよわせ、落ちつかせていく。

 六つの短編のうち二作に登場するアグネスとシドニーは、どちらも筋骨隆々、その腕力と声量と傍若無人な性格で他者を震えあがらせる。「恐怖のティーグランド」では、もし勝てばアグネスと結婚するハメになるマッチプレーで、二人の男の七転八倒が描かれる。勝者は、アグネスの伴侶になるばかりでなく、彼女を愛するシドニーに粉々ズタズタにされる運命が待ち受ける。二人はどうにかして勝つまいとあらゆる滑稽、卑劣な手段を講じる。結果的にその哀れな抵抗が欠点を是正してかつてないナイスショットを両者に生み出し、おのれのベストスコアのために恐怖の女王との結婚も辞さずとなる前半の熱い展開には、おかしさと同時にスポーツの業をも感じさせる。

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