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日本はあっさり、中国はこってり。
ACL鹿島戦で感じたテイストの違い。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byGetty Images
posted2019/09/20 11:30
決定的な一撃を放つなど、存在感を示したレオ・シルバ。しかし、鹿島は広州恒大に敗れ、ACL連覇を逃した。
いい味を出していたガオ・リン。
勝負は敵をいら立たせてなんぼ。この選手は、そういうことを熟知している。
得点者のタリスカに代わって77分に投入されたガオ・リンも、いい味を出していた。
カウンターの場面では持ちすぎるくらい持って、敵と交差した瞬間、巧妙にファウルを取る。ファウルを取って、しっかりと時間をかけてソックスを上げる。
上手くファウルをもらうなあと思って見ていたら、今度はタッチライン際で鮮やかにターンしてゴールに迫る。
ガオ・リンの投入は、カンナバーロ監督の好手となった。彼はボールを持つたびに、劣勢の味方がひと息つくようなプレーを見せた。
広州を手こずらせたレオ・シルバ。
こうした広州の面々と紙一重の勝負を演じた鹿島にも、もちろん素晴らしい選手はいる。
同点ゴールにつながるシュートを放ったレオ・シルバは、ボールを奪い、前に運び、展開して、さらにはフィニッシュと攻守のあらゆる局面に顔を出した。
終了間際、彼は決定的な一撃を放つ。
左サイドからペナルティエリアに切り込み、キックフェイントからキーパーをかわして放ったシュートは、間一髪で駆けつけたディフェンダーにライン手前で弾かれる。
広州をもっとも手こずらせた選手は、間違いなくこの男だ。
印象に残った選手が次々に挙がる広州に比べて、残念ながら鹿島はレオ・シルバに続く選手がいない。ひとりでチームを背負う、難局を打開する選手がいないところが、紙一重の差につながったという見方もできる。
日本人らしい組織的なプレーで勝利を引き寄せられればいいが、いつもそれができるとは限らない。そんなときは個人の力量によって、局面を解決しなければならない。
それが鹿島はできなかった。レオ・シルバを除く、ほとんどの選手が組織の中に埋もれてしまった。