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医師志望で、日本ナンバー1の俊足。
福岡堅樹は、最後のW杯に駆ける!
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/09/12 18:00
パシフィック・ネーションズカップでは3試合すべてでトライを奪った福岡。南ア戦のケガから、1日も早い復帰が望まれる。
W杯でベスト8に入る準備はできている。
武器であるスピードは、4年前の自身と比べても、「トップスピードで走ることを何度も繰り返してできるようになりました」と進化を実感する部分だ。
4年の歳月をかけてその能力をアップグレードさせ、チームの勝利を左右する存在へと成長。今年7、8月に行われたパシフィック・ネーションズカップでは全3試合でトライをマークし、世界の強豪にもひけを取らない攻撃力を担ってきた。
ウイングとしての存在感は日増しに高まるばかり。ジェイミー・ジャパンでも重要な役割を担っている。
「自分たちは(W杯で)ベスト8に入るために最高の準備ができてきたと思います。チームとしていいパフォーマンスを見せるために、いいチーム作りができていると思うので、そこは安心して見守ってもらえたら。自分たちらしいプレーができれば、そこに到達できると思うので、楽しみにしていてほしいです」
悲願のベスト8を達成するために必要なものとは何なのか。
「個々の力を底上げすることはもちろん重要なことですが、最終的にはチーム力が大事になってくる。コミュニケーションを取ることももちろん、チームとして同じ絵を見るというか、言葉にしないでもイメージがうまく共有できていれば、さらに良いプレーを増やせる。
それができるかどうかが、結果的にチームとしての差になってくるんじゃないかなと思います」
代表でプレーする試合は最大で8試合。
27歳といえば、選手としてこれからピークを迎える年代だ。
しかし、内科医の祖父、歯科医の父を持つ福岡は、幼い頃からの夢でもある医師を目指すため、W杯は今回が最後、来年の東京五輪限りで現役に終止符を打つことを決めている。
明確なゴールを決めているからこそ、すべての力を今、ラグビーへと注ぐことができている。
W杯前は「さすがに宮崎合宿以降は(勉強に)時間を割けないですね(笑)。この短期間ぐらいはラグビー100%で」と日課の勉強も封印し、その一瞬、一瞬を大切にしてきた。
「数えたら、本当に代表でプレーする試合は、(W杯で)決勝まで行ったとしても8試合程度。だからこそ、1試合1試合、ベストパフォーマンスを出さなければという思いは強いですね」
プレーヤーとして、「これが限界とは思っていない。プレーヤーとして続ける限りは、少しでもいい選手になりたい」という福岡。自身もまだまだ伸びしろを感じているだけに、新聞のインタビューで「完全燃焼して、少し惜しまれながら引退するぐらいでちょうどいい(笑)」と話していたが、W杯出場はこれが最後というのが少し惜しい気もする。
集大成と位置付けるこのW杯での15人制日本代表としての最後の勇姿を、しっかりと目に焼き付けたい。