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久保建英デビュー戦を象徴する写真。
18歳とは思えない味方への指示出し。
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2019/09/13 20:00
約900枚の写真から、久保建英のデビュー戦を象徴するものとして選んだ1枚。その存在感、18歳とは思えない。
約10分という短い時間での勝負。
バレンシアに加え、マドリード、バルセロナからも集まったスペイン人カメラマンから向けられるレンズを特段に気にする風でもなく、久保は談笑していた。
試合はマジョルカが2点を失う展開となった。そしてピッチの3分の2を影が覆い始めた79分、久保はピッチに立った。
ついに久保のデビュー戦を撮れる。それもアディショナルタイムだけの出場ではない。
とはいえ残された時間は10分強だ。久保はドリブルを仕掛けるのか、そもそもボールに触れる機会が巡ってくるのか。そしてポジションは右寄りで合っているのか。日向に位置している時の露出はどうするのか、ゴール前に入ってきたらここまで露出が落ちてしまう。
約10分間で“特別な何か”を切り撮りたいこちらの焦りとは対照的に、望遠レンズ越しに見えるスペインの地でデビューを迎えた、18歳の表情はとても落ち着いていた。
わずかな時間は無情に過ぎた。久保は3度ほどドリブルを仕掛けたが、大きなチャンスを作り出すことはできず、チームもそのまま2-0で終了のホイッスルを聞くこととなった。久保は若干の落胆を表情に浮かべた後、カメラに背をむける形でピッチを後にした。
ボールの動かし方を指示していた。
ウォーミングアップから撮り始めた写真は900枚近くになっていた。
久保がピッチラインに立ってからピッチを去るまでの15分ほどで、274枚。
見返す写真の中には、2度あったバレンシアのキャプテンであるパレホとのマッチアップで、両方とも久保のファウルが取られた時のものがあった。スペイン代表でもあるパレホの一枚上手が見て取れた。
とはいえ、3部に所属するカスティージャにいたままではこのレベルの選手と相対することは有り得なく、この場面だけでも、1部のマジョルカへの移籍は有意義に感じる。
そしてそれ以上に驚いたのが、18歳という若さでデビューしたばかりのこの少年が、自分の欲しい所へボールを要求しているだけではなく、チームとしてのボールの動かし方を指示していることだった。