交代で入った舘野も涙にくれた。

　意図は理解できるが、この交代はチーム、そして宮崎に何をもたらしたのだろうか。

「宮崎にミスが出て、出番があるかなと思っていたので、準備はしていました。でも、全くチームに貢献できなくて、起用してくれた先生たちに申し訳ないです」

　そう涙に暮れていたのは、宮崎にかわって一塁に入り6回表まで出場した舘野眞人だった。県大会は1試合のみの出場だった舘野は、必死に相手投手に食らいつく姿勢を見せたが、1四球は選んだものの2三振で交代した。

「県大会では順調に勝ち進んでいたので、こういうケースでの出場はありませんでしたが、練習試合などでこういう交代はありました」と舘野は語ったが、宮崎の打順が5番だっただけに、少し彼には荷が重かっただろう。

　その点は高橋監督も「左投手だから右打者とかを気にせずに、（キャプテンの）芳賀（太陽）を先発出場させるなども考えるべきだったかもしれない」と話していた。

「自分の守備から流れが悪く……」

　6回裏、履正社の投手が右腕の岩崎峻典に代わったところで、舘野には代打が送られた。

　右投手になれば左打者を送ることはチームでの共通理解だったが、自らのミスでプランとは異なる試合運びになったゲームを、宮崎はどんな思いで見つめていたのだろうか。

「自分の守備から流れが悪くなってしまった。甲子園で1度も勝ったことがないチームなので、勝てなくて悔しい気持ちでいっぱいです」

　舘野と同じく涙を流した宮崎はただただ反省を口にした。

　ミスはもちろん悔しかっただろうが、その反撃の機会がなかったことも宮崎の悔いを大きくしていたに違いない。

「この悔しさは甲子園でしか返せないと思う。もう1回甲子園に来て、勝って校歌を歌いたい。先輩たちのためにも頑張りたいです」

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